黒色再生紙マルチによる水稲の初期生育向上と雑草抑制効果の特徴


[要約]
再生紙マルチ水稲栽培において、田植時低温となる条件下で、黒色再生紙は従来の再生紙に比べて、初期生育向上効果が認められた。また、一年生雑草に対して雑草抑制効果の向上が認められた。
 鳥取県農業試験場・作物研究室・環境研究室・経営技術研究室
[連絡先]0857-53-0721
[部会名]作物生産(育種・栽培)
[専 門]栽培
[対 象]稲類
[分 類]研究

[背景・ねらい]
 再生紙マルチ水稲栽培法は、再生紙被覆による地温の低下が一因で、慣行の栽培法に比べ初期生育が劣ることがわかっている。そのため、初期生育の低下が収量へ影響する中山間地など移植時低温条件となる地域での適応性を向上させるため、黒色再生紙の水稲初期生育及び雑草に対する効果を検討した。なお、両再生紙とも紙質が120g/uのもので検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 初期の分げつ発生は、慣行の化成+除草剤区に及ばないが、従来の再生紙に比し発生節位が低く発生量も多く、葉色も早くから濃くなった。また、この傾向は、より低温である4月下旬植で顕著であった(表1)。このことから、黒色再生紙は、低温条件でより効果が高まるものと考えられる。
  2. 初期生育の向上は地温の上昇が主因と見られるが、それに伴う土壌中アンモニア態窒素の発現がやや多くなることも一因と考えられる(図1、2)
  3. 黒色再生紙は、従来の再生紙に比べ一年生雑草に対し抑制効果が高い(表2)。しかし、多年生雑草のクログワイに対しては、出芽数が無処理に比べて少なく、抑制効果が認められるが、従来の再生紙の方が抑制効果が高い(図3)。この差は、黒色再生紙の地温上昇に伴うクログワイの生育促進によるものと考えられる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 平坦部におけるデータのため、活用に当たっては注意する。
  2. クログワイの発生が多いほ場では手取り除草を併用する。

[その他]
 研究課題名:生態系を活用した水稲の持続的生産技術の確立
 予算区分 :地域重要新技術
 研究期間 :平成7〜9年
 研究担当者:湯谷一也、小林勝志* 、宮田邦夫、伊藤邦夫(* 現倉吉地方農林振興局) 
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