表層代かき同時田植機による濁水流出軽減技術


[要約]
代かき・田植時に発生する濁水を削減するため、耕起後に入水した圃場で表土を撹拌・均平しながら植付・施肥を行う表層代かき同時田植機の実用性を検討したところ、濁水発生量が削減でき、収量も慣行と同程度であり、実用性が高い。
 滋賀県農業試験場・栽培部・経営機械係、環境部・環境保全係
[連絡先]0748-46-3081
[部会名]作物生産(機械・施設)、生産環境(土肥)
[専 門]作業
[対 象]稲類
[分 類]普及

[背景・ねらい]
 代かき・田植時に発生する濁水の流出は、河川や琵琶湖の汚濁につながるため、本県では浅水代かき,排水口の完全止水,畦波シート設置の励行を推進しているが、濁水流出の危険性を低くするため、場内圃場(中粗粒グライ土)において、代かき作業が不要で、濁水発生量を削減できる表層代かき同時田植機の実用性を検討する。

[成果の内容・特徴]

 表層代かき移植区は、春耕起後に入水した圃場で、表層代かき同時田植機(6条植)を用いて、植付部の直前に装着されたロータで表土を攪拌・均平しながら植付・施肥を行う。また、対照区では、秋耕、春耕および慣行の代かきを行った後、このロータを引き上げて植付・施肥を行う。
  1. 表層代かき移植区では、春耕起後の圃場で移植4〜5日前に入水し、植付・施肥を行うが、対照区と比べ植付姿勢がやや劣るものの、実用性に問題は認められない(表1)
  2. 春期の一回耕起では、移植時にスズメノテッポウなどの雑草が再生することや、砕土率が低いことにより、ペースト肥料の埋設が不十分なため、田面水中のT-N濃度が高く推移する(図1・2)
  3. 秋期・春期の二回耕起では、移植時の再生雑草も少なく、砕土状況も良好なため、田面水中へのペースト肥料の溶出も少ない(図1・2)
  4. 表層代かき移植区は、慣行の代かきによる濁水の発生もなく、移植直後のSS(懸濁物質)濃度も低いため、濁水流出の危険が低いと考えられる(図3)。また、一筆減水深(平成8年度)は、表層代かき移植区が2.7cm/day,対照区が2.1cm/dayと表層代かき 移植区がやや多くなる。
  5. 表層代かき移植区の精玄米重は、対照区と同程度である(表2)

[成果の活用面・留意点]
  1. 移植前の除草対策と植付精度,肥料の埋設精度を高めるため、秋と春の2回耕起を行う必要がある。
  2. 慣行の移植栽培と比べて、畦畔漏水が多くなるため、周囲に畦波シートを張るなど対策を講じる必要がある。また、粗粒質土壌等,減水深の大きい土壌は不適である。
  3. 慣行の代かきを行わないため、2年以上続けた場合、移植後にイボクサやカズノコグサが多発することがある。この場合、次年度には慣行の移植栽培を行う必要がある。

[その他]
 研究課題名:農業排水対策試験
 予算区分  :県単
 研究期間  :平成8年度(平成6〜8年)
 研究担当者名:中井 譲、大橋恭一、山下勝男
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