- [要約]
- キク白さび病の発病抑制には、恒温条件では35℃・3日間継続、変温条件では35℃・6時間を7日間反復する高温処理が有効である。簡易な施設で育苗中に高温処理を行うことで、本圃での発病が極めて低くなる。
奈良県農業試験場・環境保全担当・病害虫防除チーム
[連絡先]07442-2-6201
[部会名]近畿中国・生産環境
[専 門]作物病害
[対 象]花き類
[分 類]普及
- [背景・ねらい]
- キク白さび病は罹病苗が主要な第1次伝染源であり、定植後は薬剤散布による防除に依存している。薬剤による防除はコストと労力を要するにもかかわらず、防除適期を逸すると蔓延を招く危険性をはらんでいる。そこで、苗による本圃への病原菌の持ち込みを防ぐために、苗の高温処理による防除を試みる。
[成果の内容・特徴]
- 発病株を35℃の高温条件に3日間遭遇させることにより、病勢進展が顕著に抑制され、その効果は4週間以上持続する(図1)。
- 無病徴の自然感染苗に対して、35℃の高温条件を1日あたり6時間ずつ7日間遭遇させることにより、発病は顕著に抑制され、その効果は処理後3週間以上持続する(図2)。
- 育苗床における高温処理は、ビニルトンネルとヒーターを併用することにより容易にでき、本圃への病原菌の持ち込みを顕著に抑制できる(図3、4)。
[成果の活用面・留意点]
- 恒温または変温による高温処理方法は温度制御装置の性能に応じて選択する。
- この処理法は処理期間が短く、小規模の施設で実施できるので、現行の栽培方法を大きく変更する必要はない。
- 高温処理の温度は40℃を越えないようにする。また、散水による潅水が防除効果に及ぼす影響は小さい。
- 短期間の処理では苗の生育や開花期に影響しないが、処理期間が長くなると苗が徒長しやすい。また、高温が腋芽の発生に影響する無側枝性キクでの利用には検討を要する。
[その他]
研究課題名:キク白さび病の発生生態の究明と防除技術の確立
予算区分 :国補(花き類病害虫発生予察実験事業)
研究期間 :平成8年度(平成6〜8年)
研究担当者:杉村輝彦、岡山健夫、松谷幸子
発表論文等:高温処理と薬剤によるキク白さび病の罹病苗からの除去、奈良農試研報、第27号、1996.
キク白さび病罹病苗に対する高温処理の防除効果、奈良農試研報(印刷中)
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