むかごを使ったポット苗育成によるジネンジョの販売芋生産


[要約]
ジネンジョむかごの休眠は5℃、10週間以上の冷蔵処理により打破させることができる。これによって、むかごを使ったポット苗育成が可能となり、むかご直播栽培に比べて大きな芋が育成できる。
  京都府農業総合研究所・中丹分室
[連絡先]0773(47)0307
[部会名]野菜・花き(野菜)
[専 門]栽 培
[対 象]根菜類
[分 類]指導

[背景・ねらい]
 ジネンジョの栽培は、収穫した芋を種芋とする切り芋法により行われるため、販売芋の一部を種芋として残す必要があり、種芋は切り口より土壌病原菌に汚染されやすく生産が安定しない。また、贈答用芋を生産するため、一般家庭での消費に向いていない。一方、むかごを用いた栽培では販売芋を種芋として残す必要がなく、土壌病害の発生も少ないが、直播栽培を行うため販売芋の育成に2年かかる。そこで、むかごをポットで育苗することにより、一年の育成で販売芋を生産するため、むかごの休眠特性、ポット苗の生育特性及び圃場における生産性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. むかごの休眠覚醒には5℃、10週間以上の冷蔵処理が有効で、発根、発芽率は100%を示し、芋の形成も認められる(図1)
  2. むかごを育苗箱で発芽させ、ポットに移植し育成すると、むかご苗の茎葉重はむかごの重量に比例して重くなるが、根重、芋重、芋長に大きな差は認められない(表1)
  3. ポット苗を圃場に定植し栽培すると、むかごの重量が重いほど芋の収量が増加し、一年の育成で、むかご直播法による生産芋の約5倍の芋が収穫できる(表2、図2)
  4. 切り芋法による苗は土壌病害の発生が約20%程度見られるが、むかごを利用したポット苗では土壌病害に罹った芋は見られない。但し、土壌病害の発生が見られない圃場に定植すること。

[成果の活用面・留意点]

  1. むかご苗は、切り芋法で問題となる土壌病害を回避することができる。
  2. むかご苗による販売芋は贈答用ではなく、一般家庭で消費しやすいように一定の長さに切って袋詰めする等の方法で販売する。
  3. むかご苗は切り芋苗と同じように、クレバーパイプ(用土は赤土)とコの字パイプの支柱を使用して栽培する。

[その他]
 研究課題名 :山菜類の高付加価値種苗増殖技術の開発 
               (3)ジネンジョ無病苗増殖技術
 予算区分  :府単
 研究期間   :平成8年度(平成5〜8年)
 研究担当者 :塩見香、吉川正巳
 発表論文等 :むかご利用によるジネンジョのポット苗育成とその生育特性、園芸学会雑誌、第64巻別冊1、1995.
              むかご由来のポット苗育成によるジネンジョの一年生芋生産、京都農研報17、1995.

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