- [要約]
- ニホンナシ‘おさ二十世紀’に放射線を照射し、樹体、果実の特性及び自家和合性は原品種‘おさ二十世紀’と同じで、黒斑病耐病性の‘おさゴールド’を選抜した。
鳥取県園芸試験場・果樹研究室、農業生物資源研究所
[連絡先] 0858-37-4211、 02955-2-1138
[部会名]果樹
[専 門]育種
[対 象]果樹類
[分 類]普及
- [背景・ねらい]
- ‘おさ二十世紀’は自家和合性で人工受粉が省略できるが、黒斑病にり病性である。‘ゴールド二十世紀’は‘二十世紀’の放射線による突然変異体利用により育成された黒斑病耐病性系統で、殺菌剤の散布回数が大幅に削減できる品種である。
- そこで、‘おさ二十世紀’に放射線を照射して、黒斑病耐病性系統を選抜し、人工受粉が不要で黒斑病防除が削減できる新品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 黒斑病粗毒素(AKトキシン)を用いた検定で、原品種‘おさ二十世紀’より明らかに強い耐病性を示すとともに、黒斑病耐病性の‘ゴールド二十世紀’よりやや強い耐病性を示す(表1)。‘幸水’や‘豊水’のように完全抵抗性ではなく果実に小黒斑のこん跡を残すことがある。
- 樹姿は原品種‘おさ二十世紀’と差が認められず、外観から両者を判断することは困難である。短果枝の着生は多く、えき花芽の着生は少ない。短果枝の維持も容易で、いずれも‘おさ二十世紀’と同程度である。
- 花の外観、開花期とも‘おさ二十世紀’と同じであり、健全な花粉を生ずる。
自家和合性は‘おさ二十世紀’と同等に高く、自家受粉によって多数の種子を形成する(表2)。
- 果実の大きさ、外観、品質とも‘おさ二十世紀’と同程度である(表3)。収穫期は同樹齢の‘ゴールド二十世紀’と同じであるが、成木の‘おさ二十世紀’より遅い(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 黒斑病耐病性は完全ではないが‘ゴールド二十世紀’より強い耐病性であり、抵抗性品種‘幸水’‘豊水’の防除暦で十分対応できる。
- 自家結実性は‘おさ二十世紀’と同様で、年によっては1花そうあたり6果程度着果することがあるので摘らいや早期摘果を行う必要がある。
- ‘二十世紀’‘おさ二十世紀’等の果実は若木より成木になるにしたがって成熟期が早まり、糖度も安定する傾向があるので、収穫時期は9月上中旬、糖度11度以上、果重300g以上の特性を備えた品種と判断される。
- 種苗登録申請中である。
[その他]
研究課題名:放射線による突然変異体を利用したニホンナシ黒斑病耐病性品種育成に関する研究
予算区分 :県単
研究期間 :平成8年年度(昭和63〜平成8年)
研究担当者:鳥取園試 北川健一、井上耕介、村田謙司、吉田亮、長柄稔、内田正人
農業生物資源研究所放射線育種場
増田哲男、吉岡藤治、壽和夫、真田哲朗
発表論文等:放射線による突然変異体を利用したニホンナシ黒斑病耐病性品種育成に関する研究
(第1報)、‘新水’の黒斑病耐病性系統の選抜について、園芸学会雑誌、61巻別冊2、1992.
放射線による突然変異体を利用したニホンナシ黒斑病耐病性品種育成に関する研究
(第2報)、‘おさ二十世紀’の黒斑病耐病性系統の選抜について、園芸学会雑誌、
61巻別冊2、1992.
放射線による突然変異体を利用したニホンナシ黒斑病耐病性品種育成に関する研究
(第3報)、2つの‘おさ二十世紀’黒斑病耐病性突然変異系統における耐病性の比較、
園芸学会雑誌、61巻別冊2、1993.
ガンマ線急照射によるナシ黒斑病耐病性突然変異体の選抜、園芸学会雑誌、62巻4号、
1994.
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