- [要約]
- 夏どりキャベツの機械移植栽培におけるセル成型苗の潅水方法として、腰水により給水し、不織布のマットにより余剰水分を排水する。これにより培地が適湿に保たれ、高温期の発芽が安定しセル成型苗の安定生産が可能となる。
奈良県農業試験場・高原分場・地域特産開発チ−ム
[連絡先] 0745-82-2340
[部会名] 野菜・花き(野菜)
[専門] 栽培
[対象] 葉茎菜類
[分類] 普及
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[背景・ねらい]
- セルトレイで育苗を大量に行う場合、手潅水では多くの労力を要する。一方ミスト潅水では、潅水むらが生じ易い。エブアンドフロー方式(腰水潅水)では、灌水むらは解消できるが、トレイの底に溜まった停滞水による過湿が問題となる。そこで潅水むらと過湿の両方に対応できる省力的潅水法を開発する。
[成果の内容・特徴]
- ベンチの周囲にL字鋼で約2pの高さの壁を巡らし、防水性のシート(マルチフィルム)を両側に20p程度垂れるようにかぶせ、同様に不織布のマット、防根シートの順に敷く(図1)。
- 給水は腰水により、余剰水分の排水は不織布のマットにより行なう。
- 給水部は散水用のチューブを用い、2〜3分以内にベンチが満水になるようにチューブの穴を調整する。これにタイマーと電磁弁を組み合わせ、ベンチが5分間満水状態を維持するように給水時間を設定し、給水頻度は1日1〜3回、必要に応じて増減する。
- 本方式では給水終了後、すみやかに排水され、30分後にはセル内の水量が安定する。したがって培地に余剰水は存在せず、過湿を防ぐことができる。一方エブアンドフロー方式およびミスト方式では培地の水分は徐々にしか減少せず、余剰水がセル培地中に滞留する時間が長い(図2)。
- 本方式ではキャベツの発芽率は高温期の6月、7月播種でも90%以上の良好な結果が得られる(表1)。
- 本方式による根鉢強度はミスト方式と同程度である。
[成果の活用面・留意点]
- 10uあたりの資材費は、防根シート1450円、不織布マット4000円、ビニルシート(ポリマルチ)150円、合計5600円となる。1トレイあたりでは100円、4回利用すると25円となる。
[その他]
研究課題名 : 中山間地資源利用による高品質野菜の周年生産技術
予算区分 : 地域基幹
研究期間 : 平成10年度(平成7年〜10年)
研究担当者 : 中野智彦、杉本好弘
発表論文等 : キャベツのセル成型苗育苗におけるマットによる給排水の有効性、奈良県農業試験場成果情報、2号、18-20、1997.
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