生溶解性ポット苗育苗によるハクサイの定植適期の拡大


[要約]
ハクサイの生溶解性ポット苗はセル苗及びぺ−パ−ポット苗と比較して、定植後の活着が良い。また、根鉢形成が必要なセル苗に比べて、若苗定植が可能で苗の定植適期の拡大が図れ、多収も見込める。
和歌山県農林水産総合技術センタ−農業試験場 栽培部 
[連絡先] 0736-64-2300
[部会名] 野菜・花き(野菜) 
[専門]    栽培  
[対象]    葉茎菜類 
[分類]    普及

[背景・ねらい]
 従来、本県におけるハクサイの育苗はセルトレイ及びペ−パ−ポットを用いた育苗が主体であった。セル苗は、若苗や老化苗を定植すると定植時期の気象(土壌)条件により生育が不良となることがあり、定植期間の幅が狭い。ぺ−パ−ポット苗(以下PP苗)は苗箱当たりの土量が多くなり重いこと、手植えが主体であること等から取り扱いに難点もある。
 そこで、ハクサイ等の露地野菜の省力育苗技術と機械移植に対応した技術として、生溶解性ポット苗(サブストレ−トポット苗:培養土を薄い生溶解性の不織布で包んだ苗、以下SSP苗)を用いたハクサイの生産技術を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 定植10日後の引き抜き抵抗値は適期苗(育苗25日、展開葉;3.5−4.5枚)、若苗(育苗10日、展開葉;2.5−3.0枚)ともPP苗、セル苗に比べて、SSP苗が大きい(表1)。
  2. 定植10日後の地上部茎葉生体重は若苗ではセル苗が最も重くSSP苗、PP苗の順である。適期苗ではSSP苗が最も重く、セル苗、PP苗の順である。同様に、地下部の根の乾物重は若苗、適期苗とも定植10日後ではSSP苗が最も重く、18日後ではSSP苗とセル苗がほぼ同等である。(表1)。しかし、SSP苗はセル苗に比べて細い側根の発生が多い。
  3. 引抜き抵抗値はpF1.5〜2.0ではSSP苗がセル苗、PP苗に比べて高い。地上部生体重はpF1.5ではSSP苗が最も重く、pF1.8以上では明らかな差は認められない(図1図2)。
  4. 収量は春作、秋冬作ともSSP苗がセル苗に比べて優れ、SSP苗は若苗定植でも安定した収量が得られる(図3図4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. SSP苗の育苗には腰水かん水法が適当である。
  2. 本成果は春作、秋冬作で利用可能と考えられる。

[その他]
研究課題名 : 軟弱野菜の高生産性及びねこぶ病発生抑止技術の開発
予算区分    : 地域基幹
研究期間    : 平成10年度(平成6〜10年)
研究担当者 : 神藤  宏、藤岡 唯志
発表論文等 : 1)サブストレートポットでの育苗培養土の酸度矯正によるハクサイ根こぶ病の発病抑止、園芸学会雑誌、第65巻、別冊1、236-237、1996.
                    2)ハクサイのサブストレ-トポット苗の特性と定植後の生育・収量、園芸学会雑誌、第67巻、別冊2、114、1998.
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