収穫体験型観光農園経営の特徴と問題点


[要約]
収穫体験型観光農園経営では入園料金以外に直売、宅配サービスが粗収益拡大に貢献している。近年来園客が「減少」、「横ばい」傾向にある農園が多く、今後直売、宅配サービスの充実や開園期間の長期化、付帯施設の整備等が求められる。
和歌山県農林水産総合技術センター農業試験場・栽培部
[連絡先] 0736-64-2300
[部会名] 営農
[専 門] 経営
[対 象] 
[分 類] 指導

[背景・ねらい]
 農村を訪れる都市住民の増加や農産物の価格低迷等を背景に観光農園経営に取り組む農家が増加している。しかし、農業生産一筋に取り組んできた農家にとって観光農園の管理運営は容易ではない。そこで、収穫体験型観光農園の経営者に対する聴取調査結果をもとに、観光農園経営に共通する特徴を明らかにするとともに、今後の課題を検討する。

[成果の内容・特徴]

    調査対象とした収穫体験型観光農園は和歌山県中・北部の果樹もぎ取り園やオーナー制観光農園である。
  1. 観光農園経営の主な特徴は次のとおりである(表1)。
    1. 収穫時期のみを対象とした観光農園が多く、開園期間が短い。
    2. 複合経営の一部品目を観光農園部門としている経営が多い。
    3. 観光農園部門の収益が大きい農園では、園内での農産物の直売や宅配サービスが粗収益の拡大に大きく貢献している。
    4. 市場出荷では必要のない駐車場、トイレ等の付帯施設が設置されている。しかし、来園客の集中する休日と祝日には十分対応できていない現状にある。
    5. 来園客の近年の動向が「減少」ないし「横ばい」傾向にある農園が多い。
  2. 来園客が増加している経営は、旅行会社等との契約や収穫時期の異なる品目の組み合わせによる開園期間の長期化等に取り組んでいる(表2)。
  3. また、来園客が横ばいまたは減少している経営は、他の観光イベント等との競合が生じている(表2)。
  4. 今後、観光農園部門を重視する経営では(1)園内での直売や宅配サービスの充実、(2)収穫時期の異なる品種、作型、新品目の導入等による開園期間の長期化、(3)付帯施設の整備、(4)旅行会社等との契約、(5)イベントの開催等による来園客の招致等が課題である。なお、これらの課題の重要度は個々の経営状態により異なる。

[成果の活用面・留意点]

    本成果は収穫体験型観光農園に共通した特徴と問題を示した。個々の観光農園では立地条件、導入作目、経営規模等が異なるため、それぞれの問題点は別途検討を要する。

[その他]
研究課題名:交通アクセス向上に伴う中山間観光農業の振興策
予算区分 :県単
研究期間 :平成11年度(平成11〜13年)
研究担当者:光定 伸晃、辻 和良
発表論文等:消費者の観光農園利用実態と観光農園経営の課題−消費者アンケートと和歌山県内の事例をもとに−、地域農林経済学会大会報告論文集第7号、29-34、1999.

目次へ戻る