養液栽培トマトの経済性及び導入条件


[要約]
ロックウール耕による養液栽培トマトの年間所得は土耕栽培を下回るが、労働時間は土耕栽培に比べて少なく、10a当り400万円程度の養液栽培システムであれば、土耕栽培並みの投下労働時間当り所得が確保できる。
島根県農業試験場・企画調整部
[連絡先] 0853-22-6650
[部会名] 営農
[専 門] 経営
[対 象] 果菜類
[分 類] 指導

[背景・ねらい]
 各種養液栽培システムの導入が盛んに行われ、普及現場からその経営的評価が求められている。そこで、ロックウール耕による養液栽培トマトの半促成作型と抑制作型の経済性について、同一農家での2年間の調査データをもとに土耕栽培との比較や、養液栽培システムの取得価額の違いによる損益分岐点の比較などを行い、その導入条件を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. ロックウール培地の点滴型給液方式による養液栽培トマト(施設面積10a)の半促成と抑制の両作型での年間収量は21,593sで、土耕栽培に比べて23%高く、粗収益では土耕栽培を大きく上回っている。一方、養液栽培では年間の経営費が土耕栽培の約2倍であり、特に300万円の養液栽培システムや107万円の温湯加温機にかかる減価償却費をはじめ、光熱動力費や肥料費などが多く、年間所得では土耕栽培を25%下回っている(表1)。
  2. 養液栽培トマトの半促成作型での10a当り労働時間は662時間であり、作業別にみると育苗(接木が不要)や定植準備(培地準備)などが比較的少なく、土耕栽培よりも22%少ない。その結果、出荷量の約7割を占める半促成作型での投下労働8時間当り所得はいずれも17千円台であった(表1)。一方、抑制作型でのそれは養液栽培が16,733円、土耕栽培が23,117円であり、両作型の年計では養液栽培が土耕栽培を12%下回っている。
  3. 養液栽培トマトの両作型での1s当り単価(半促成227円、抑制315円)を前提に、家族労働見積額を時給2,000円として養液栽培システムの取得価額の違いによる企業的利潤の損益分岐点収量を試算すると、500万円のシステムでは年間22,062s、1,000万円のシステムでは年間25,903sとなる(表2)。したがって、現状の収量水準で土耕栽培並みの経済性を確保するためには、10a当り400万円程度の比較的安価な養液栽培システムが必要である。

[成果の活用面・留意点]

  1. トマトの養液栽培システムの取得価額と目標収量の目安として活用できるが、土耕栽培での経済性や家族労働見積額の違いによってそれぞれの目標収量は大きく異なる。

[その他]
研究課題名:新技術及び省力栽培技術の経済性と導入条件の解明
予算区分 :県単
研究期間 :平成11年度(平成10〜13年)
研究担当者:竹山孝治

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