中国地域における肉用牛飼養と耕作放棄地率の関連性


[要約]
中国地域においては、肉用牛飼養農家は非飼養農家に比べて耕作放棄地率が低い。また、肉用牛飼養農家の中でも、繁殖牛を飼養している農家と飼料作を作付けている農家は、耕作放棄地率が低い。
中国農業試験場・総合研究部・動向解析研究室
[連絡先] 0849-23-4100
[部会名] 営農
[専 門] 経営
[対 象] 肉用牛
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 中国地域は中山間地域の割合が高く、高齢化も進んでいる。このため、耕作放棄地率は他地域に比べて高く、この傾向は今後も続くと考えられる。人手による中山間地域の耕作放棄地防止は限界にきており、肉用牛を放牧で飼養することにより遊休農林地を活用し耕作放棄を防止することが一部の地域で模索されている。ここでは、統計解析(1995年農業センサス)により耕作放棄地と肉用牛飼養との関係を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 耕作放棄地率の差は一般的傾向として、保有労働力、地帯別条件、経営内容等の違いによって差が見られる。すなわち、耕作放棄地率が高い農家は、特に農業労働力が脆弱な経営である。地帯別条件では中間農業地域、都市的地域、山間農業地域、平地農業地域の順に高い。経営内容では、自給的農家、養鶏、花卉・花木、果樹類が高く、稲作、酪農、複合経営が低い。
  2. 中国地域における肉用牛飼養農家と非飼養農家の耕作放棄地面積を比較すると、図1に示されるように、全域および中山間地域の比率が高く、肉用牛生産の多い島根県、 中山間地域で、肉用牛生産の比較的多い島根県大田市、大田市の中でも土地条件が悪く肉用牛飼養農家率が特に高い富山地区のいづれも、肉用牛飼養農家は非飼養農家に比べて耕作放棄地率が低い。
  3. 肉用牛飼養頭数規模でみると、耕作放棄地率が低いのは頭数規模の小さな農家で、繁殖牛経営が中心である。耕作放棄地率の高いのは土地との結びつきが弱い肥育経営を中心とする100頭規模以上層(8.1%)である。(表1)。
  4. また、飼料作を作付けている農家(8,594戸)の耕作放棄地率(2.3%)は、非作付農家(5,206戸、4.5%)に比べて約半分である。

[成果の活用面・留意点]

    ここでは、肉用牛経営の耕作放棄防止メカニズムについては検討していない。統計上とらえた現象を示したものである。

[その他]
研究課題名:中国中山間地域における遊休農林地及び肉用牛生産の実態解明と動向解析
予算区分 : 地域総合
研究期間 :平成11年度(平成10〜12年)
研究担当者:安武 正史
発表論文等:中国中山間地域における耕作放棄と肉用牛飼養、第49回地域農林経済学会大会報告要旨、112、1999.

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