酒米新品種「佐香錦」
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[要約]
- 高級酒用酒米新品種「佐香錦」を育成した。「五百万石」よりも5日程度晩生で、多収である。玄米品質は「五百万石」並みで良質である。醸造適性は「五百万石」を上回り、きき酒評価は「山田錦」と同程度である。
島根県農業試験場・作物部・作物科
島根県中山間地域研究センター・総合技術科
島根県産業技術センター・生物応用科
[連絡先]0853−22−6650
0854 -76- 2025
0852 -52- 4480
[部会名] 作物生産(育種・栽培)
[専 門] 育種
[対 象] 稲類
[分 類] 普及
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[背景・ねらい]
- 近年、日本酒に対する消費者の嗜好の変化を背景に、高級酒である吟醸酒や純米酒の生産割合が増加している。その原料はおもに「山田錦」が使用されているが、本県での栽培には適さないため、ほとんど他県から購入しており、県内酒造業界から高級酒の醸造に適する独自品種の開発が望まれている。そこで、本県育成の「改良八反流」の短稈化と早生化を図り、栽培特性の優れた高級酒用品種を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 昭和60年に「改良八反流」を母本に、「金紋錦」を父本として人工交配し、集団育種法により育成した。平成7年から「島系酒49号」の地方系統名を付して、地域適応性を検討した。
- 出穂期は、「五百万石」に比べて5日程度遅く、極早生に属する(表1)。
- 稈長は、「五百万石」に比べて3cm程度長いが「改良八反流」に比べると26cm程度短い。耐倒伏性は「改良八反流」を上回り「五百万石」と同程度のやや強である(表1)。
- 葉および穂いもち抵抗性はやや弱で、「五百万石」および「改良八反流」と同程度である。白葉枯病抵抗性は中で、「五百万石」に比べて優る(表1)。
- 穂発芽性はやや難で「改良八反流」に比べて優り、「五百万石」より劣る。耐冷性はやや弱で「五百万石」と同程度である(表1)。
- 玄米重は、「五百万石」に比べて4%程度上回り、多収である(表1)。
- 玄米千粒重は「五百万石」に比べて1g重く、玄米品質は同程度である(表1)。
- 醸造適性は「五百万石」を上回り、「改良八反流」に近い(表2)。
- きき酒の総合評価は、搗精歩合45%までの場合「山田錦」と同程度である(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 耐冷性が劣るため、普及地帯は島根県内の標高200m〜300mの地域とする。普及予定面積は当面50haを目標とする
- いもち病抵抗性が劣るので、多肥栽培は避け、基幹防除の徹底につとめる。
- 白葉枯病抵抗性は強くないので、常発地での栽培は避ける。
[そ の 他]
研究課題名:水稲新品種育成試験
予算区分 :県 単
研究期間 :平成12年度(昭和60〜平成12年)
研究担当者:山本 朗、高橋眞二、福田誠、杉山万里、岩本正俊
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