水稲「どんとこい」の準奨励品種採用


[要約]
「どんとこい」は「コシヒカリ」よりも短稈で耐倒伏性に優れ、やや多収である。成熟期は「コシヒカリ」より遅く、本県の庄原市・比婆郡の作期分散に適する早生品種として、準奨励品種に採用する。
広島県立農業技術センター・作物研究部
[連絡先]0824-29-0521
[部会名]作物生産(育種・栽培)
[専  門]育種
[対  象]稲類
[分  類]普及

[背景・ねらい]
 庄原市・比婆郡での水稲の作付品種は「コシヒカリ」と「中生新千本」に偏重しており、収穫時期の作業競合が課題となっている。収穫期の作業分散のために、「コシヒカリ」と「中生新千本」の中間の成熟期で、良食味の品種が求められている。

[成果の内容・特徴]

  1. 出穂期は「コシヒカリ」とほぼ同時期で、成熟期は「コシヒカリ」より6日遅く、「中生新千本」より4日早い本県では早生の晩に属する(表1表3)。
  2. 稈長は「コシヒカリ」より短く、耐倒伏性に優れる。穂数は「コシヒカリ」並で、草型は中間型である(表1)。
  3. 収量は「コシヒカリ」、「中生新千本」よりやや多収である(表2)。普及対象地域の現地試験においても「コシヒカリ」よりやや多収である(表3)。
  4. 外観品質は中で、年次により腹白粒、乳白粒、心白粒が発生する(表2表3)。
  5. 食味は「コシヒカリ」よりやや劣るが、粘りがあり、良食味である(表4)。
  6. 穂発芽性は「コシヒカリ」より易で、「中生新千本」と同程度である(表1)。
  7. 以上、「どんとこい」は、成熟期が「コシヒカリ」と「中生新千本」の中間で、耐倒伏性に優れ、やや多収であることから、庄原市・比婆郡の作期分散に適する品種である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 庄原市・比婆郡の概ね標高300m以下の地域に限定して普及を図っていく。普及目標面積は500ha。
  2. 高温登熟性がやや低く、登熟期間がやや長いので早期落水は避け、登熟および品質の向上に努める。
  3. 短稈で耐倒伏性は強いが、過剰な施肥は収量、品質の低下をもたらすので留意する。
  4. 穂発芽しやすいので適期刈取を励行する。

[その他]
研究課題名:主要農作物の優良品種選定および種子生産
予算区分  :国補
研究期間  :平成12年度(平成8〜11年)
研究担当者:大川浩史、浦野光一郎、伊藤夫仁
発表論文等:なし

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