水稲「ゆめおうみ」の湛水土中直播栽培技術


[要約]
短強稈で倒伏抵抗性が大きい「ゆめおうみ」は、日平均気温が15℃を下回る4月下旬に播種する湛水土中直播栽培にも適応できる。苗立数はm2 当たり60〜110本、 穂数はm2 当たり400〜450本の範囲で、収量は10a当たり540s以上が可能である。
滋賀県農業総合センター・農業試験場・栽培部・作物担当
[連絡先]0748-46-3081
[部会名]作物生産(育種・栽培)
[専  門]栽培
[対  象]稲類
[分  類]指導

[背景・ねらい]
 水稲「ゆめおうみ」は、「キヌヒカリ」に比べ低温下での発芽が遅く、低温出芽適性がやや劣るので、圃場レベルの湛水直播栽培(覆土を行う耕起代かき作溝条播方式)において播種期の早限を検討し、併せて、安定した収量が得られる苗立数の範囲について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 「ゆめおうみ」、「キヌヒカリ」とも、4月11日播種では苗立数がm2 当たり約30本と少なく減収は免れないが、4月21日播種では苗立数がm2 当たり60本以上確保でき減収はみられない(表1図1)。
  2. 湛水直播栽培における「ゆめおうみ」は、「キヌヒカリ」に比べて出穂期は6〜8日、成熟期は6〜10日遅くなる。また、「ゆめおうみ」の穂数は各播種期とも「キヌヒカリ」を上回り、穂数の確保が容易である(表1)。
  3. 肥効調節型肥料で10a当たり窒素成分基肥5s、速効性肥料で穂肥3s施用した湛水土中直播栽培における「ゆめおうみ」の穂数と収量の関係から、m2 当たり穂数が400〜500本の範囲で10a当たり 540s以上の収量となり、m2 当たり穂数が400〜450本で最も多収になると推定され、対応する苗立数はm2 当たり60〜110本である(図2表2)。
  4. 播種量は、10a当たり乾籾で3.5sとすれば播種粒数はm2 当たり約130粒となり、苗立率が45〜85%の範囲で変動しても、苗立数はm2 当たり60〜110本の範囲になる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 種子は浸種催芽後、カルパー粉粒剤16を乾籾重量の2倍重コーティングする。
  2. 播種後から出芽始めまでの水管理は、落水状態で管理する。しかし、低温による出芽遅延の場合は適宜浅水入水し、土壌の大亀裂の発生と硬化の抑制を図る。
  3. 農試本場の中粗粒から細粒グライ土、やや肥沃地での試験結果であり、瘠薄土壌地帯では収量性が劣るため施肥改善が必要である。
  4. 平成13年3月改訂の県稲作技術指導指針の湛水直播栽培基準に反映させる。

[その他]
研究課題名:再生紙マルチ利用等による環境負荷軽減型直播栽培技術の開発
予算区分  :国補(地域基幹農業技術体系化促進研究)
研究期間  :平成12年度(平成11〜12年)
研究担当者:鳥塚  智、吉岡ゆう、北浦裕之
発表論文等:平成12年度滋賀県農林水産主要試験研究成果

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