イチゴ品種「さちのか」の作型前進化技術
- [要約]
- 「さちのか」では、定植前に暗黒低温処理することで、11月から収穫が始まり、年内収量が増加する。暗黒低温処理温度を13℃→16℃、入庫10日目に日照処理し、出庫後2〜3日間日陰で順化することで、頂花房の出蕾が安定する。
山口県農業試験場・栽培技術部・園芸栽培グループ
[連絡先]083-927-7011
[部会名]野菜・花き(野菜)
[専 門]栽培
[対 象]果菜類
[分 類]普及
-
[背景・ねらい]
- 「さちのか」は着色・果実硬度・果形の揃いが優れ、食味も良く、ジベレリン処理や玉出し作業が不要で、省力効果もあることが期待される品種である。一方、「とよのか」に比べて収穫開始時期が遅れるという問題があり、その解決が望まれている。
- そこで、「さちのか」の生理生態の特性を解明し、作型前進化の技術を確立する。
[成果の内容・特徴]
- 暗黒低温処理温度は、前半10日間を13℃、後半を16℃とすることで分化が安定する(表1)。
- 暗黒低温処理中、処理10日目に日照処理(日中8時間)を行うことで、開花株率が向上する(表1)。
- 暗黒低温処理後、日陰で順化することで開花株率が向上する。順化日数が4日を超えると開花時期が遅くなり、年内収量が低下するので、適正日数は2〜3日である(表2)。
- 開花を安定的に促進し、年内収量を増加させる観点から、地域ごとの適切な定植日・ 暗黒低温処理期間の目安は、次の通りである。
平坦地 | 定植日 | 9月 5日 | 暗黒低温処理期間 | 8月18日〜9月 3日 |
| 9月10日 | | 8月24日〜9月 8日 |
中山間地 | | 8月16日 | | 7月28日〜8月14日 |
| 8月25日 | | 8月 6日〜8月23日 |
- 中山間地域の促成栽培では、暗黒低温処理による8月15日〜8月25日定植が適作期である。平坦部では、暗黒低温処理促成栽培(9月5日頃定植)と普通促成栽培(9月20日頃定植)の作型組み合わせにより11月から安定した収量の確保が可能になる(表3、図1)。
[成果の活用面・留意点]
- 順化日数は、出庫時の天候により調節する。
- 冷蔵庫によっては、温度設定16℃が不可能な場合があるが、その場合は後半の温度を出来るだけ16℃に近づけて設定する。
- 本研究は、佐賀県、福岡県、鹿児島県と共同研究により実施したものである。
[その他]
研究課題名:イチゴの省力型品種を利用した省力・長期・計画生産技術の開発
予算区分 :県単(県間共同研究)
研究期間 :平成11年度(平成9〜11年)
研究担当者:内藤雅浩、木村一郎(徳佐寒冷地分場)
発表論文等:イチゴ小型ポット育苗における花芽分化発育安定技術、平成10年度農畜産関係試験研究成果発表要旨、31-32、1998.
目次へ戻る