捕獲外来魚乾燥粉砕物の野菜栽培用肥料としての利用技術
- [要約]
- 脱脂処理をしない捕獲外来魚の加熱乾燥粉砕処理物は、トマトや軟弱野菜の施設栽培に有機質肥料として利用できる。窒素は無機化が速く、基肥、追肥として無化学肥料栽培の施肥体系に利用でき、新たな有機性資源として活用できる。
滋賀県農業総合センター農業試験場・栽培部・環境部
[連絡先]0748-46-3081
[部会名]野菜・花き(野菜)
[専 門]栽培
[対 象]葉茎菜類、果菜類
[分 類]指導
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[背景・ねらい]
- 湖沼の水産資源・生態系保全のために捕獲される外来魚(ブルーギル)は廃棄されている現状であが、これを肥料として有効活用を図るため土壌中での分解特性等を検討するとともに、農産物の高付加価値化や連作障害回避の効果等が特に期待できる施設野菜栽培における利用技術を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 捕獲外来魚(ブルーギル)の加熱乾燥粉砕処理物(N:P2 O5 :K2 O=11.0:7.1:1.5%、以下外来魚肥料と略す)は、C/N比が4.1で、30℃の土壌中での無機化率(土壌中無機態窒素増加量/外来魚肥料中全窒素量×100)は3日で40%、10日で60%と速く、10日目以降の無機化増加率は少ない(図1)。
- ホウレンソウに対して、播種前の施用時期は早い方が生育良好となる。しかし施肥成分量で20〜25kgN/10a(外来魚肥料現物施用量180〜230kgN/10a)までであれば、播種直前に施用しても生育障害は発生しない(図2)。
- ホウレンソウ、コマツナの5連作(各作の施肥成分量: 25-10-10-10-10kgN/10a)でも、魚粉や油粕と同等の収量が得られ、連用が可能である。但し、収穫日数が60日程度を必要とする低温期の栽培では、化成肥料に比べると生育が劣る(表1)。
- トマトの半促成栽培(施肥成分量30kgN/10a、基肥割合40%)および抑制栽培(施肥成分量15kgN/10a、基肥割合30%)でも、油粕や骨粉に替えて外来魚肥料を基肥、追肥に使用して同等の収量性が得られる(表2)。尻ぐされ果、条ぐされ果等の発生が多くなることはない(データ略)。
[成果の活用面・留意点]
- 高温期には速効性肥料として使用する。
- 他の有機質肥料と同様に、低温期には肥効がでにくいので施用量、施用時期を考慮する。
- 猫による土壌の掘り返しやタネバエの発生など、動物性肥料に共通する問題が起きることがある。
[その他]
研究課題名:捕獲外来魚の肥料化試験
予算区分 :県単
研究期間 :平成12年度(単年度)
研究担当者:中野 学、猪田有美、小松茂雄
発表論文等:平成12年度滋賀県農林水産主要試験研究成果
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