花壇苗生産における肥料成分流亡軽減のための用土組成
- [要約]
- 花壇苗用土に多孔質である木炭を混合すると、鉢底からの肥料成分流亡を抑え得る。用土のパーライト混合割合30%のうち、10%を木炭に置き換えることで、ビンカの生育を減退させることなく硝酸態窒素流亡量を減らせることが可能である。
大阪府立農林技術センター・企画部・開発普及課
[連絡先]0729-58-6551
[部会名]野菜・花き(花き)
[専 門]栽培
[対 象]他の花き類
[分 類]指導
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[背景・ねらい]
- 花き生産における環境保全型農業の推進は不可欠であり、環境への負荷を削減できる栽培技術が強く望まれている。慣行の花壇苗栽培では鉢底から水が流れ出すまで頭上かん水を行うため、肥料成分等の流亡が多いと考えられる。そこで、一定の生育を維持しつつ、鉢底からの肥料成分の流亡を軽減し、肥料の有効利用を図るための用土組成を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 緩効性被覆肥料を1g/ポット施与し、頭上かん水による栽培管理において、ビンカの苗を定植後、鉢底からの肥料成分流亡量を硝酸態窒素を指標に測定した結果、7日目ごろから流亡が始まり、28日目前後まで流亡がみられる。それ以降、新たな流亡は見られない(図1)。
- 1g/ポットの施与窒素量は130mgであるが、基本用土の場合、硝酸態窒素流亡量は22.1mgである。パーライト混合割合30%のうち、10%を木炭で置き換えた区では15.4mg、20%を木炭で置き換えた区では2.6mg、30%すべてを木炭にした区では0.9mgと木炭を多くなるほど流亡量が低く抑えられる(図1)。
- 基本用土において、肥料の施与量を30%削減(0.7g/ポット)とした場合の硝酸態窒素の流亡量は15.2mgとなり、1g/ポットで10%を木炭で置き換えた区と同程度の流亡量である(図1)。
- ビンカにおいて、1g/ポットの場合、基本用土と10%を木炭で置き換えた用土とでは同程度の生育を示し、20%以上木炭で置き換えた用土では生育が劣る。また、0.7g/ポットの場合では、いずれの用土でも1g/ポットに比べ生育が劣る(表1)。
- 基本用土と木炭を10%用いた場合との用土の価格を試算した結果、いずれも同程度の価格であり、コスト面での問題はない(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- ピートモスを主体とした用土で、緩効性被覆肥料を用い、頭上かん水での結果であるので、底面吸水等栽培管理が異なる場合には検討を要する。
[その他]
研究課題名:花壇苗生産における環境保全型施肥管理技術の開発
予算区分 :府単
研究期間 :平成12年度(平成12〜14年)
研究担当者:磯部武志
発表論文等:平成12年度開発普及課試験成績書、88-96、2001.
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