ヤブサンザシの花芽数確保による結実向上


[要約]
実物切り枝花木であるヤブサンザシの花芽数は前年の収穫時期の早晩に強く影響され、9〜11月にかけて収穫分散すると花芽数の減少が抑えられる。また、花芽分化初期(8月下旬)の施肥も花芽確保に有効である。
兵庫県立中央農業技術センター・農業試験場・園芸部 
[連絡先]0790ー47ー1117
[部会名]野菜・花(花き)
[専  門]栽培
[対  象]他の花き類
[分  類]指導

[背景・ねらい]
 ヤブサンザシは実が赤く熟する9〜11月に、3年生枝を株元より切り枝する花木である。近年産地では着花数減少による結実不良枝が発生し、外観の品質低下が問題となっている。そこで、花芽形成面から花芽減少時期を明らかにするとともに、その対策としての収穫時期や施肥法を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. ヤブサンザシの花芽は1年及び2年生の枝の各腋芽に形成され、8月25日頃に生長点肥大、9月11日には花房分化期に達した。以降、雌ずい分化期の12月25日まで休眠することなく花芽が発達する(表1)。
  2. 腋芽の小花は、花房分化期までは6個認められ、その大きさも同程度であるが、がく片分化期には大きさに差が生じ、花弁分化期には4.7個、胚珠形成期には3.3個となり、退化、減少がみられる(表1)。
  3. 切り枝の収穫時期が早いほど腋芽の小花数が減少し、花芽の発達が遅れる。9〜11月にかけて収穫を分散すると小花数の減少が抑えられる(表2)。
  4. 花芽分化期頃に当たる8月下旬施肥は、花芽の減少を抑え、9月収穫でも正常な小花数である6個に近い花芽数が確保でき、開花に至る。窒素量4kg/10aで施用効果が認められる(図1)。
  5. 8月下旬施肥及び9〜11月にかけて収穫の分散を行った株は、翌年1節の着果数4個以上、着果節率80%以上となり、結実良好な枝が収穫できる(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 8月下旬施肥で施用量が多いと、10月にかけ新梢の2次生長が認められ、着果枝と無着果枝長のバランスが悪くなる。土壌条件等を考慮して施肥量を決定する。
  2. 樹勢の弱っている株は9月収穫を避け、10〜11月に行うなど収穫時期を遅らせる。

[その他]
研究課題名:ヤブサンザシの結実向上栽培技術の確立
予算区分  :県単
研究期間  :平成12年度(平成9〜12年)
研究担当者:和田 修
発表論文等:ヤブサンザシの花芽数の確保、ひょうごの農業技術、106号、7、1999.

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