[成果情報名]

露地ナス非循環閉鎖型養液栽培装置と培養液管理方法

[要約] 露地ナス非循環閉鎖型養液栽培装置を開発し、その生育に適した培養液処方(農総研ナス処方)を作成した。本処方の培養液を給液することにより、ベッド内培養液濃度の上昇が抑えられ、安定した生育・収量が見込める。
[キーワード] ナス、露地養液栽培、培養液組成、培養液濃度
[担当] 京都農総研・野菜部
[連絡先] 0771-22-0424、t-wada21@mail.pref.kyoto.jp
[区分] 近畿中国四国農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 露地ナス栽培における連作障害の回避、省力化、施肥量の低減をめざして非循環閉鎖型の露地ナス養液栽培システムを開発した。しかし、園試処方で栽培すると、硝酸態窒素とカルシウムが蓄積してベッド内ECが上昇し、生育不良の原因になることから、本システムでのナスの無機成分吸収量からECの上昇が少ない培養液処方を作成し、生育の維持と培養液管理の簡略化を実現する。
[ 成果の内容・特徴 ]
  1. 活性炭1:ピートモス1の混合物を培地とする2層式の露地ナス非循環閉鎖型養液栽培装置を開発した(図1)。培養液は、ロックウールマット貯留水槽内に設置した水位センサーにより、自動的に減少分が補給される。
  2. 農総研ナス処方の主要無機成分はEC 1.8 dS/mの時、NO-3-N:132.8、NH+4-N:11.2、PO43-:85.6、K+:198.1、Ca2+:95.8、Mg2+:32.1(各ppm)である。
  3. 農総研ナス処方で夏季のみEC 1.2 dS/m、その他の季節はEC 1.8 dS/m で給液することにより、ベッド内のECは栽培期間を通じて露地ナス養液栽培の生育に適した1.5〜1.8 dS/m に維持できる(図2)。
  4. 農総研ナス処方で千両二号(トルバム・ビガー台)を栽培すると、園試処方よりも樹体の生育が促進され、8月以後の収量が優れる(図3)。
  5. 夏季に、園試処方ではロックウールマット貯留水槽内にNO-3、Ca2+、Mg2+が蓄積されるが、農総研ナス処方では比較的少ない(表1)。
  6. 収穫期が6月中旬から10月末の農総研ナス処方による窒素投入量は4.1 kg/aであり、慣行の土耕トンネル早熟栽培の53%に低減できる。またその時の年間給液量は39.8 t/aである(図2表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 培養液濃度の変更時期は気象、生育条件に合わせる必要があるが、おおむね梅雨明け時からEC 1.2 dS/mとし、9月中旬からEC 1.8 dS/m とする。
  2. 露地での栽培システムのため、多量の降水後にベッド内のECが大幅に低下する場合があるが、生育不良には至らない。

[具体的データ]


[その他]
研究課題名 中山間地域におけるクリーンエネルギーを利用した野菜の安定生産技術
予算区分 地域基幹
研究期間 2001〜2004年
研究担当者 和田豊明、寺岸明彦、磯野浩太

目次へ戻る