[成果情報名]

不織布を利用したキャベツの無農薬・減農薬栽培技術

[要約]作型に応じて適切な不織布資材を「べたがけ」又は「浮きがけ」することにより、キャベツ栽培での虫害を軽減でき、また、盛夏期の太陽熱処理を併用することで生育・収量が安定する。
[キーワード]不織布、被覆、無農薬・減農薬栽培、太陽熱処理、キャベツ
[担当]山口農試・栽培技術部・園芸栽培グループ
[連絡先]電話番号 083-927-7026、電子メール nishida.misako@pref.yamaguchi.lg.jp
[区分]近畿中国四国農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 野菜価格の低迷が続く中で、新鮮で安心な野菜の供給が求められると同時に、無農薬・減農薬栽培等、付加価値の高い野菜生産を目指す生産者も増加している。
 そこで不織布を利用して簡易で省力、低コストな被覆栽培を行い、キャベツの無農薬・減農薬栽培技術を確立する。
[成果の内容・特徴]
  1. キャベツ結球部への虫害を軽減するために、以下の栽培方法が有効である。
    (1) 本ぽ施肥は緩効性を含む肥料を使用し、全量基肥とする。
    (2) 育苗時から被覆(浮きがけ)もしくは網室育苗をし、防虫対策を徹底する。
    (3) 不織布内の雑草及び高温対策のため、白黒ダブルマルチなどを使用する。生分解性マルチも使用可能である。
  2. 被覆方法は、定植時期に応じ以下のとおりとする。「べたがけ(直がけ)」はキャベツが生長してもすそをもちあげることがないよう、幅に余裕を持たせて固定する。
    (1) 3月下旬~4月上旬定植では、光線透過率90%の不織布を定植直後から「べたがけ」する。「浮きがけ」よりさらに省力・低コストである(表1)。
    (2) 7月下旬~8月下旬定植では、高温時の定植のため、高温ストレス回避と病害虫による欠株防止に有効な遮光率40~45%のシルバー不織布を定植直後から「浮きがけ」する(表2)。
    (3) 9月上旬~9月下旬定植では、光線透過率90%の不織布を定植直後から「べたかけ」する(表3)。
  3. 太陽熱処理を施肥・作畦後、透明フィルムで7月下旬から8月下旬まで全面被覆する方法で行う。これにより、土壌害虫による欠株および雑草の発生が抑えられ、生育・収量が安定する(表4)。
  4. 不織布やマルチ等の資材コストは、慣行栽培での農薬費と比較して10aあたり3万円程度高くなる。このため、1球あたり10円程度の高付加価値販売ができれば、経営的に成り立つ。
[成果の活用面・留意点]
  1. 標高50mの平坦地での試験である。
  2. 上記(2)の作型は定植時の粒剤施用を原則とし、不織布内の害虫発生状況によっては防除が必要である。
  3. 上記(3)の作型において太陽熱処理を実施した場合、マルチは必要ない。処理効果はその年の気象によって十分でない場合もあるため、被覆期間等の検討が必要である。
  4. 台風襲来時は「浮きがけ」の支柱を倒し「べたがけ」とする。
  5. この技術はキャベツの他、ブロッコリーなどに適用できるが、レタスは不織布内の高温により抽台が促進されるため不適である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名被覆資材を利用した露地野菜の無農薬・減農薬栽培技術の確立
予算区分国庫
研究期間2002~2005年
研究担当者西田美沙子、重藤祐司、刀祢茂弘

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