[成果情報名]

簡易なモデル化による露地太陽熱処理時地温の推定

[要約]夏期、地表に透明フィルムを被覆して行う露地太陽熱処理において、地温実測値と気温および日射量のデータを解析しモデル式を作成することで、処理時の地温推定が可能である。
[キーワード]露地太陽熱処理、地温、モデル、気温、日射量
[担当]兵庫農総セ・農技・園芸部
[連絡先]電話番号 0790-47-2423、電子メール takao_saitou@pref.hyogo.jp
[区分]近畿中国四国農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 露地太陽熱処理は、夏期に雑草や病害虫の防除を目的として行われている。しかしこの処理の効果は年次や時期により気象条件が異なるため不安定で、処理期間が明確でないことが問題点の一つとして挙げられる。
 そこで処理期間をリアルタイムに決定するための手がかりとするため、気象データ(気温、日射量)から処理時の地温を推定するモデルを作成する。
[成果の内容・特徴]
  1. 地温推定モデルは、ある時点での地温Tg’にその後1時間の地温変化ΔTgを加えることで1時間後の地温Tgを算出し、これを繰り返すことにより太陽熱処理時の地温を随時計算する(図1)。パラメーターを最小限にするため、地温変化は気温と地温の差(以下、気温地温差とする)および日射量の2要因のみで決定されると仮定する。
  2. モデル式の作成においては、1の考えに基づき、処理時の地表下5cmの地温実測値と気象データ(気温、日射量)を解析する。具体的には、太陽熱処理時の1時間毎の地温変化の実測値および気象データから得られる1時間毎の平均気温と積算日射量を用いて、日中については気温地温差ごとの積算日射量と地温変化の関係から(図2)、夜間については気温地温差と地温変化の関係から式を作成する(式の作成にはマイクロソフト社表計算ソフト「Excel」を使用)。
  3. 今回作成したモデル式は以下のとおりである(モデル作成にあたり算出基礎データとして利用した太陽熱処理は、2003年に兵庫農総セ内ほ場で実施)。
     日中(r≠0) Tg=Tg’+1.894×r−0.3043×(Tg’−Ta)+0.6182
     夜間(r=0) Tg=Tg’−0.0145×(Tg’−Ta)2−0.0044×(Tg’−Ta)−0.1511
      (式中記号は図1参照、気象データの単位:日射量r;MJ/m2/h、気温Ta;℃)
  4. このモデルを式の作成に用いた気象データで実行すると、実測値に極めて近い値が得られ(図3)、他の処理事例について本モデルを用いて地温の推定を行うとほぼ実測値に近い値が得られる(図4)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本モデルは地表下5cmの地温を推定するものであり、雑草を防除対象とした場合に特に有効で、対象とする雑草種子の発芽が抑制される温度および積算時間に関するデータを蓄積することで、防除効果を得るための処理終了時期を決定できる。
  2. 露地太陽熱処理を集団的に取り組んでいる地域では、気温と日射量を測定できる測器を1基備えることで、その地域の処理条件(土壌、被覆資材など)および測器に応じたモデルを作成し、処理終了時期に関して情報を発信することが可能になると考えられる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名クリーンエネルギーを利用した中山間地域安定生産技術の確立
予算区分国庫受託
研究期間2001〜2004年度
研究担当者斎藤隆雄、大塩哲視、竹川昌宏

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