[成果情報名]

2年で成園化するイチジク「桝井ドーフィン」の5倍密植

[要約]イチジク「桝井ドーフィン」の苗木を慣行の5倍、列間1.8m、株間0.8mの株仕立てで密植することにより、植え付け2年目で成園並みの収量を得ることができる。
[キーワード]イチジク、5倍密植、早期成園化
[担当]兵庫県立農林水産技術総合センター・農業技術センター・園芸部
[連絡先]電話番号 0790-47-2424、電子メール takashi_mano@pref.hyogo.jp
[区分]近畿中国四国農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 イチジクは経済樹齢が10〜15年と短く、樹勢低下により改植を要する場合や、低温に弱いため寒波で地上部が枯死する場合があり、疎植では再度成園化するまでに長期間を要する。また、イチジクの栽培者には女性や定年退職者が多く、手軽に始めて少しでも早期に投入資本を回収したいという要望が強い。
 そこで、定植後1、2年のごく早期に成園化を図るとともに、地上部が枯死した場合の早期回復を目的とし、栽植密度2〜10倍(株間0.4〜2.0m)の超密植と慣行の4.0mで栽培を比較し、植え付け後3年間のイチジク樹の生育、果実品質および収量を検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 1樹当たり結果枝数は、1年目で0.4m区、2年目で0.8m区において目標の本数に達する。3年目には、2m区がほぼ目標本数に達するが、慣行の4m区は3/4程度にとどまる(表1)。新梢の生育は2、3年目には0.4m、0.8m区が旺盛になり、副梢数も増える(表2)。
  2. 果実の着果開始節位は、1年目は各試験区とも14〜15節と高いため、0.4m区のように極端に密植して結果枝数を確保しても、1年目に成木並みの収量は得られない。2年目以降は6〜7節目、3年目には4節目となり、成木との差は少なくなる。果実品質は、年次によって果実重、糖度ともに若干の差があるが、慣行の4m区を含む試験区間に一定の傾向はない。果実重は各年次とも成木と比べると小さいが、果皮の着色は成木を含め各年次とも有意差はない(表3)。
  3. 栽植3年目までの収量は、0.8m区が最も多く、2年目で収量は約2.8tとなり、ほぼ成木に近い収量が得られる(図1)。3年目にも同等の収量が確保され、株間4mの慣行区と比べ2年目で3.5倍、3年目で1.9倍となる。0.4m区では、1年目に成園時の枝数となるが、収量は成木の1/7程度であり、2年目の収量も0.8m区よりやや劣る。慣行の4m区では、3年を経過しても目標収量(3t/10a)の1/2である(図1)。
  4. 以上より、収量及び品質両面から判断して、初期収量の確保には慣行の5倍密植(本試験の場合株間0.8m)が最も優れている。
[成果の活用面・留意点]
  1. 5倍密植栽培は慣行に比べ、過繁茂傾向になりやすいため、副梢の整理や摘心を適切に行い、光環境の改善に努める。また、徒長気味になることが予想される園地では、間隔をやや広めにとる。
  2. 株間0.8mの場合で、反当植え付け本数は約700本となる。イチジクの苗木は、挿し木が容易でコストがあまりかからないが、苗木を大量に供給するシステムが必要である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名イチジクの超早期成園化による増収技術の確立
予算区分県単、受託
研究期間2001〜2005年度
研究担当者真野隆司、水田泰徳、福井謙一郎、宇田 明、濱田憲一
発表論文等1)真野隆司ら(2005)近中四農研.6:72−75.
2)真野隆司(2004)落葉果樹研究会栽培・土壌肥料分科会:87−90.

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