[成果情報名]

受胚牛の発情排卵同期化処理へのeCG投与追加は、胚移植成績を向上させる

[要約]ウシの胚移植を目的とした発情排卵同期化処理にウマ絨毛性性腺刺激ホルモン製剤(eCG) 投与を追加することによって、複数黄体の形成が高率に誘起できる。また、移植時の選定率を高めるとともに、受胎率を向上できる可能性がある。
[キーワード]ウシ、胚移植、eCG、発情排卵同期化、プロジェステロン
[担当]島根県立畜産技術センター・繁殖技術グループ
[連絡先]電話番号 0853-21-2631、電子メール sasaki-emi@pref.shimane.lg.jp
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 母体内のプロジェステロン(P4)の役割は、子宮内を胚の発育に適した環境にすることであり、比較的高いレベルで維持された場合には、移植胚の生存性を高めるとされている。そこで、腟内留置型プロジェステロン製剤(CIDR)による発情排卵同期化法をアレンジ(過剰排卵処理を追加)して、胚移植成績を向上させる手法を検討する。過剰排卵処理のためのホルモン製剤には、比較的血中半減期が長いウマ絨毛性性腺刺激ホルモン(eCG)を選択し、調査対象は農家繋養のホルスタイン種雌牛とする。
[成果の内容・特徴]
  1. 発情排卵同期化処理(図1)は、発情周期の任意の時期にCIDRを7〜10日間挿入、同時に安息香酸エストラジオール2mgを投与する。そして、CIDR抜去時にプロスタグランジンF製剤(PG、ジノプロストとして15mg)、PG投与48時間後(Day0)に性腺刺激ホルモン放出ホルモン製剤(酢酸フェルチレリンとして100μg)を投与する。eCG追加投与(1,000IU)は、PG投与48時間前に行う。
  2. 移植を目的とした検査(直腸検査および超音波画像診断による生殖器等の検査)はDay7に行い、受胚牛には1頭あたり1胚を移植する。ただし、中等度ないし強度の子宮収縮を示す牛、黄体の長径が10mm未満の牛は移植から除外する。
  3. eCGを追加投与した51頭のうち38頭(74.5%)で複数黄体の形成が確認され、1頭あたりの黄体数は平均2.2個である(表1)。
  4. eCG追加投与の場合(eCG(+))の選定率(移植可能頭数/検査頭数)は、非投与の場合(eCG(-))と比較して有意(P<0.05)に高い。eCG(+)の受胎率は、eCG(-)と比べて高い傾向である(表2)。
  5. eCG(+)のDay7での血中P4濃度はeCG(-)と比べて有意(P<0.05)に高い(図2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. CIDRを用いた発情排卵同期化処理にeCGの単回投与を追加するだけの比較的簡易な処理なので、フィールドで活用しやすい。
  2. 移植する子宮角の優先度は、黄体数が多い側、比較的長径の大きい黄体が存在する側、卵胞数が少ない側の順で決定する。
  3. 移植可否の判定について、現場技術者向けの検査指針を作成する必要がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名胚移植子牛の生産効率高度化のための受胎アシスト技術の開発
予算区分県単
研究期間2002〜2004年度
研究担当者佐々木恵美、長谷川清寿、安部亜津子、高仁敏光

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