[成果情報名]

ウシ胚の閉鎖型ゲル・ローディング・チップ・ガラス化法の開発

[要約]閉鎖型ゲル・ローディング・チップ・ガラス化法は粘性の高い液体をチップ先端に付着させることにより、簡易な操作で胚を含むガラス化液と液体窒素との接触を避けることができ、従来法と同様に高いウシ体外受精胚及び切断サンプリング胚の生存性が得られ、受胎性もある。
[キーワード]ウシ、閉鎖型、ゲル・ローディング・チップ、ガラス化、体外受精胚
[担当]兵庫農総セ・生物工学
[連絡先]電話 0790-47-2414、電子メール Keiichirou_Tominaga@pref.hyogo.jp
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 安全安心が重要視されている昨今、家畜胚の流通や医学領域の卵子や胚の保存における感染のリスクは解決しなければならない問題である。超急速ガラス化法では著しく速い速度を得るために、胚を含むガラス化液、あるいはそれらを封入した開放型ガラス化容器を直接液体窒素に接触させている。その際に、卵子や胚を含むガラス化液が液体窒素と直接接触することにより、真菌、細菌、あるいはウイルス感染を受ける危険性が指摘されている(Bielanski et al. 2000、2003、Morris 2005)。この対策として、精液プラスチックストローでは、熱シールやパウダーで密閉する方法が用いられているが、極めて短時間のガラス化液中での平衡時間内に作業を終了できず、また、除去にも時間がかかる。ゲル・ローディング・チップ(GL-Tip)ガラス化保存法(Tominaga and Hamada、2001)では、開放部が極めて小さい容器を使用しているが、卵子あるいは胚を含むガラス化液と液体窒素との接触を完全に防ぎ、しかも、短時間で密閉操作を実施するために、粘性の高い液体でチップ先端部をシールする閉鎖型GL-Tipガラス化法を開発した。
[成果の内容・特徴]
  1. 開放型の従来のGL-Tipガラス化保存法に加えて閉鎖型では、シーリング剤をチップ先端部に少量付着させた後、シーリング剤及び胚を含むガラス化液を液体窒素へ浸漬する。液体窒素ガス中でオートピペット取り付け部にスティックを差込み(図1)、チップをサヤに挿入する。
  2. シール液付着時には、オートピペットは吸引停止状態になり、しかも、ガラス化液は粘性が高いため、液体窒素浸漬前の1-2秒の短時間に、粘性の高いシール液をチップ内に吸い込むことはない。
  3. 加温時には、液体窒素ガス中でサヤからチップを取り出し、スティックを抜き、37℃に加温した0.5mLの0.25Mスクロース液に先端部を浸漬し、シール剤を除去する(図2)。次に、1mlの同液中へチップから胚を移し、2段階でガラス化液を希釈、除去する。
  4. 胚盤胞及びサンプリング胚とも閉鎖型は従来型と生存性に差がみられず()、移植により、1頭の受胎例が得られた。
  5. ウシ体外受精由来7日目胚盤胞をそのまま、あるいは切断サンプリング後GL-Tipガラス化に供し、加温後培養し生存性を従来法と比較し、さらに、2個の加温胚を2頭の受胚牛に移植して、受胎性を調べる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 液体窒素からの真菌、細菌及びウイルス感染を完全に避けることができる。
  2. 超急速ガラス化によって、従来の開放型GL-Tipガラス化法と同様の生存率が得られる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名胚の大量生産による優良牛の増産
予算区分県単
研究期間2004〜2005年度
研究担当者冨永敬一郎、岩木史之
発表論文等特許申請(特願2005-307660:平成17年10月21日)

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