[成果情報名]

縦型密閉発酵施設を用いた堆肥化におけるスクラバー方式による臭気低減化

[要約]縦型密閉発酵施設から排出されるアンモニアガスは、スクラバー方式の水洗浄方法で90%以上削減することができ、洗浄後の水は窒素肥料として飼料作物生産に利用できる。
[キーワード]家畜ふん尿、脱臭、スクラバー方式、水洗浄方法、アンモニア
[担当]香川畜試・飼料環境担当
[連絡先]電話番号 087-898-1511、電子メール VC8521@pref.kagawa.jp
[区分]近畿中国四国農業(畜産草地)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 場所をあまり取らずに自動運転の家畜ふん尿処理施設として普及した縦型密閉発酵施設(以下オートコンポ)は、堆肥化時に高濃度なアンモニアガス(以下ガス)が発生し大きな問題となっている。この施設には脱臭施設としておが屑脱臭槽等が設置されているが、ガスを長期的かつ安定的に脱臭することは難しい。このため、オートコンポから排出されるガスを90%以上削減することを目標に、スクラバー方式・水洗浄方法による脱臭方法を検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 散水量、ガス風量、ガス濃度を調整できる脱臭装置(以下脱臭装置)を試作し、外気温12度、脱臭装置内10度以下時に散水だけで脱臭試験を行ったところ、ガス風量200L/min時の脱臭率は散水量が多くなるにつれて高くなった。散水量0.1L/minでガス濃度3,000ppm時では71.7%の脱臭率があった。(表1
  2. 脱臭装置内に数種類の充填材をつめると木材チップ・竹チップ等の有機系資材の脱臭効果が高く、外気温10度、脱臭装置内8度以下、ガス風量200L/min、ガス濃度3,000ppm時に0.1L/minの散水量でガスを99.8%脱臭することができる。(表2
  3. 木材チップをつめた脱臭装置とオートコンポを接続し、ガスの脱臭を行ったところ、最高気温15.2度、脱臭装置内最高温度18.3度、オートコンポ発酵最高温度56度、最高ガス濃度2000ppm時に、ガス風量200L/min、散水量0.1L/minで99%以上脱臭することができる。(図1
  4. 接続した脱臭装置で、オートコンポ発酵温度58〜60度、ガス濃度1100ppm、ガス風量200L/min時に散水を停止したところ脱臭率が90%以下となったのは、夏季(気温31度)10分後、冬季(気温10度)は180分後であった。(図2
  5. 洗浄廃液中の主成分はNH4であり、このNH4濃度とECには高い相関がありECから洗浄廃液中のNH4濃度を簡易に推定することができる。(図3
  6. 洗浄廃液(NH4-N 570mg/L)は、イタリアン栽培の追肥肥料(1回当り窒素0.5kg/a)として、尿素の代替とすることが可能である。(図4
[成果の活用面・留意点]
  1. 脱臭率は散水量や散布方法及び脱臭施設内の温度等によっても左右され、温度が高くなると低下する。
  2. 充填材の木材チップを長期利用する場合は、脱臭効果が落ちることが考えられるのでチップの交換が必要である。(約1年半の試験期間中では変化なし。)
  3. 今回のイタリアン栽培では硝酸態窒素は50ppm以下であったが、栽培環境により安全性が心配されるので家畜の給与に注意する。廃液は浄化して洗浄水として再利用が求められているので、現在、簡易な浄化処理方法を検討中である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名畜産系コンポスト化処理時の臭気低減化
予算区分県単
研究期間2003〜2005年度
研究担当者藤井耕児、白川 朗
発表論文等香川県畜試研報41号掲載予定

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