[成果情報名]

泌乳牛への菓子・乾麺屑入りTMR給与による影響

[要約]菓子・乾麺屑はTMR中の殻類と置換し、乳牛へ給与することが可能である。これら食品製造残さの給与により、第一胃アンモニア態窒素濃度と血中および乳中尿素窒素濃度が低減する。
[キーワード]乳用牛、菓子屑、乾麺屑、第一胃アンモニア態窒素、血中・乳中尿素窒素
[担当]兵庫農総セ・淡路・畜産部
[連絡先]電話番号 0799-42-4883、電子メール Kentarou_Ikuta@pref.hyogo.jp
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 食品リサイクル法の施行を受けて、食品業界は製造残さや余剰物の再生利用に真剣に取り組んでいる。菓子・乾麺屑は主として型くずれによって生じる製造残さで、製造工程で必ず一定の割合で排出される。したがって、消費期限切れの売れ残りと異なり、品質的には新しいものが安定的に得られるうえ、澱粉を多量に含み、エネルギー源として高い飼料価値が期待できる。そこで、これら菓子・乾麺屑を殻類の一部と代替え給与し、泌乳牛の生産性や栄養生理に及ぼす影響を検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 菓子屑5品目と乾麺屑1品目について飼料成分を分析したところ、いずれも乾物率は90%以上と高く、運搬性や保存性に問題はない。品目C以外では粗脂肪含量が20%以上と高く、とくに、チョコレートを含む品目Aと品目Bは30%を超えるため、牛用飼料には適さない(表1)。
  2. 初産牛と経産牛を各4頭ずつ供試し、当初慣行の完全混合飼料(TMR)を給与する対照区に対し、対照区に給与する殻類(圧片トウモロコシと皮付圧片大麦)の23.9%を品目C(ウエハース)、品目D(ビスケット)、品目F(乾麺屑)を等量ずつ混合して置換する試験区の2区を設け、一期14日間のクロスオーバー法で飼養試験を実施する(表2)。
  3. 菓子・乾麺屑を混合した試験区TMRの嗜好性はよく、両区の乾物摂取量に差はない。また、乳量および一般乳成分にも差がないことから、菓子・乾麺屑の給与は飼料摂取量と乳生産に悪影響を及ぼさない(表3)。
  4. 第一胃液のpHと総揮発性脂肪酸濃度に差はないものの、飼料給与後4時間に試験区の酢酸比率と酢酸:プロピオン酸比が有意に低くなる(表4)。
  5. 第一胃液のアンモニア態窒素濃度は飼料給与後4時間に試験区が有意に低く、その排泄過程で生じる尿素態窒素も血中では飼料給与後4時間に、乳中では飼料給与前と飼料給与後4時間に試験区が有意に低くなる(表4)。両区の粗蛋白質と非繊維性炭水化物の含量はほぼ等しいので、試験区では菓子・乾麺屑が素早く発酵して第一胃内微生物へエネルギーを供給することで、アンモニア態窒素を効率よく菌体蛋白合成に利用した結果、第一胃内の余剰アンモニアが減少し、血中および乳中の尿素窒素が低下したと考えられる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 菓子・乾麺屑はTMRにおいて、殻類では困難であった蛋白質分解速度に同調させ得る発酵エネルギーの供給源として利用できる。
  2. 菓子・乾麺屑を給与する場合、第一胃発酵に悪影響のないようTMR全体としての粗脂肪と繊維(NDF)の含量に留意した飼料設計が必要である。
  3. もとの製品に含まれる各種食品添加剤のうち、飼料添加物として使用が認められていない物質が含まれていないことを確認する必要がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名家畜用飼料として利用可能な食品余剰物の検索と飼料化技術及び実証試験
予算区分県単
研究期間2001〜2005年度
研究担当者生田健太郎、高田 修、設楽 修

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