[成果情報名]

レンゲ跡飼料イネ栽培におけるメタン発酵残さ(消化液)の液肥利用技術

[要約]レンゲ跡飼料イネ栽培に消化液を利用する場合、消化液の窒素量を化学肥料での慣行施用量と同じになる量とすることで追肥に利用できる。化学肥料施用基準量と比べ、リンが少なくカリウムは多給となるが、生育や無機成分組成等への影響はない。
[キーワード]家畜ふん尿、メタン発酵、消化液、窒素、レンゲ跡、施用量、飼料イネ
[担当]滋賀畜技セ・バイテク環境担当
[連絡先]電話番号 0748-52-1221、電子メール S226157@pref.shiga.lg.jp
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 地球温暖化防止等、環境問題の関心が高まっている中、家畜ふん尿や食品廃棄物等の廃棄物系バイオマスをエネルギーに変換するメタン発酵技術が注目されているが、発酵後の残さである消化液の処理については課題が残り、普及の障害になっている。
 消化液の処理には浄化施設を併設し河川放流する方法があるが、資源循環や環境負荷低減の観点から液肥として有効利用する技術が求められている。そこで、飼料イネのレンゲ跡移植栽培において、消化液の施用効果を検討し、消化液の液肥利用体系の確立を図る。
[成果の内容・特徴]
 乳用牛ふん尿を主体とした高温メタン発酵施設より排出された消化液を飼料イネに施用し、標準的な化学肥料(窒素の形態:アンモニア態窒素)の施用と比較した。消化液施用量は消化液に含まれる窒素が化学肥料の窒素施用量と同じになる量とした。品種はホシアオバを用い、消化液の施用は、レンゲ由来の肥料成分が利用される基肥は省略し、追肥として中干し後と出穂10日前の2回施用した。
  1. 供試消化液の肥料としての特徴は窒素、カリウムの含有率が高く、リン、マグネシウム、カルシウムの含有率は低い。消化液のほとんどが水分で有機物は少ない(表1)。
  2. 10a当たりの肥料成分施用量は、消化液中の窒素を基準とすると、化学肥料と比べてカリウムは過剰、リンは少ない(表2)。
  3. 収量調査の各項目は消化液区と慣行施肥区で大きな差はなく、乾物収量は慣行施肥区と同等かそれ以上となる(表3)。
  4. 収穫時の養分吸収量は、消化液区は慣行施肥区と比べ、窒素は少ないがリンはほぼ同じである。カリウムは過剰施用となるが、カリウム吸収量はほぼ同じか少なく、飼料イネが過剰吸収することはない(表4)。
  5. 消化液区、慣行施肥区ともに飼料イネ中に硝酸態窒素は検出されず、K/Mg+Ca当量比も両区の間に大きな差はなく、危険値の2.2を大きく下回る(表4)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 消化液中の窒素含量が施用量の指標となる。
  2. 消化液を水口から用水と同時に流し込むことにより、ほぼ均一に施用できる。
  3. 土壌に残存する可能性のあるカリウムの影響について、連年施用による調査が必要である。
  4. 消化液施用後、田面水が排水路に流出しないよう注意する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名バイオガスシステムの普及定着化技術の開発
予算区分県単
研究期間2004〜2005年度
研究担当者土井真也、川本友香、藤田 耕

目次へ戻る