[成果情報名]

気高系黒毛和種種雄牛における脂肪交雑(BMS)に関与するQTLの位置とその効果

[要約]第5染色体80〜100cM、第9染色体30〜40cM、第17染色体0〜30cM、第28染色体50〜60cMに気高系黒毛和種種雄牛のBMSに関与するQTL領域が存在する。
[キーワード]肉用牛、気高系、黒毛和種、脂肪交雑、QTL
[担当]鳥取県畜産試験場・育種改良研究室
[連絡先]電話番号 0858-55-1362、電子メール oe_t@pref.tottori.jp
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 ある個体が優良遺伝子を保有しているか否かを推定する指標として育種価がある。この手法では、全兄弟牛の期待育種価は同じ値になる。実際は全兄弟においても親からの遺伝子の伝わり方は異なる。そこで我々は、マイクロサテライトマーカーを利用した黒毛和種のマーカーアシスト選抜手法の開発に取り組んでいる。本手法を従来の統計遺伝学的手法に組み入れることにより、選抜の正確度が向上することが期待される。
[成果の内容・特徴]
  1. 本研究では、気高系種雄牛の半兄弟家系(肥育産子:去勢738頭)を用いてQTL解析を実施する。対象経済形質は、脂肪交雑(BMS)とする。本解析により気高系種雄牛におけるBMSに関与するQTLの位置とその効果を推定する。
  2. BMSに関与するQTL領域は第5染色体80〜100cM、第9染色体30〜40cM、第17染色体0〜30cM、第28染色体50〜60cMに存在する。
  3. 第5染色体、第9染色体、第17染色体、第28染色体のQTL領域のアリル効果(優良遺伝子領域を持っている個体と持っていない個体のBMS No.の平均値の差)はそれぞれ0.54、0.71、0.52、0.58である。(表-1
  4. BMSに関与する4つの優良遺伝子領域を持つ個体は、4つとも持たない個体と比較してBMS No.の平均値が1.76高い。(図-1
[成果の活用面・留意点]
  1. 4つのQTL領域の情報を用いた選抜によりBMSを対象形質とした選抜の正確度の向上が期待できる。
  2. 個体のDNAが得られた段階で優良遺伝領域を保有しているかどうかを判定できるため、遺伝的に優れた個体を早期に効率的に選抜できる。
  3. 現時点では、これらの4つのQTL領域の情報の活用は、本種雄牛の後代の選抜のみに限られるため、他の種雄牛における活用には、さらに調査が必要である。
  4. これらQTL領域の情報のみを活用すると、BMSにおける未同定のQTLや他の経済形質に関与するQTLの存在を無視して選抜する恐れがあるので、種雄牛候補の選抜には育種価など、他の情報も加味して総合的に判断する必要がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名鳥取県黒毛和種種雄牛におけるマイクロサテライトマーカーを用いた優良遺伝子座領域の探索
予算区分国補(畜産新技術実用化対策事業)
研究期間2004〜2005年度
研究担当者小江敏明、高須賀晶子・溝口 康(動物遺伝研)

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