[成果情報名]

兵庫系黒毛和種種雄牛で検出された脂肪交雑に関与するQTL

[要約]第9染色体の58〜84cMおよび第14染色体の29〜47cMに脂肪交雑に関与するQTLが存在し、それぞれBMS No.を0.78および0.71高くする効果をもつ。
[キーワード]肉用牛、黒毛和種、脂肪交雑、QTL
[担当]島根県立畜産技術センター・繁殖技術グループ
[連絡先]電話番号 0853-21-2631、電子メール abe-atsuko@pref.shimane.lg.jp
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 育種価は黒毛和種の重要な選抜指標のひとつとして利用されているが、育種価の高いウシから生産された個体が優良遺伝子を保有しているかどうかは、その後代の表現型から推定する必要があり、優良後継牛の選抜には長期間を要する。一方、経済形質に関与する染色体領域(QTL)を特定すれば、個体が優良遺伝子を保有しているかどうかを確実に判定することが可能となり、選抜の精度向上と効率化が期待できる。そこで、重要な経済形質のひとつである脂肪交雑を対象としてQTLを検索する。
[成果の内容・特徴]
  1. 1頭の兵庫系種雄牛(A)由来の去勢産子(527頭)からBMS No.の上位(8〜10;93頭)および下位(2〜3;68頭)の個体(161頭)を抽出して、1次解析の対象とする。QTLの検出には、産子のマイクロサテライト(MS)マーカー型と表現型値を用いる。1次解析では、常染色体を対象として227個のMSマーカー型を判定する。1次解析で有意な領域が検出された染色体は、48個のMSマーカー(第9染色体;28個、第14染色体;20個)を配置して、全個体(527頭)を用いた2次解析によってQTLの位置およびアリル置換効果を推定する。
  2. 脂肪交雑に関与するQTLは2か所推定され、1つは第9染色体の58〜84cMに、もう1つは第14染色体の29〜47cMに存在する。これらQTLのアリル置換効果は0.78および0.71と推定され、全分散に対する寄与率は、それぞれ0.039および0.032である(表1)。
  3. 2か所の脂肪交雑QTLの優良アリルが伝達された確率とBMS No.との関係は式1で表される。これにより、2か所のQTLについて、両方とも優良アリルを受け継いだ場合の効果は1.52と推定され、相加的である。また、この効果の全分散に対する寄与率は0.069である。
  4. 各QTLにおける優良アリルの有無別に高BMS No.の個体の出現頻度を比較すると、第9および第14染色体ともに、優良アリルを持つ群の方が持たない群よりも高い。また、2か所とも優良アリルを持つ群といずれも持たない群とを比較すると、分布の違いはさらに顕著となる(図1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 種雄牛Aの後代において、脂肪交雑の改良を目的とした選抜に活用できる。また、2か所のQTLのアリル情報を併せて利用することにより、脂肪交雑に関してより高い改良効果が期待できる。
  2. これらQTLのアリル情報のみを用いた選抜を行うと、脂肪交雑における未同定のQTLや他の経済形質に関与するQTLの存在を無視することになり、それらの優良アリルを排除してしまう恐れがある。したがって、種牛選抜の際には育種価や発育値など、他の情報も加味して総合的に評価する必要がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名DNA育種実用化試験
予算区分交付金(畜産新技術実用化)
研究期間1998〜2007年
研究担当者安部亜津子、渡邊敏夫(動物遺伝研)、高仁敏光

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