[成果情報名]

イネシンガレセンチュウ汚染種子の比重選による除去

[要約]  イネシンガレセンチュウの寄生したイネから採種した種子を比重別に調査した結果、比重1.13以上 では、イネシンガレセンチュウの汚染種子数が少なく、種子当たりの線虫数も少ない。このことから、 比重1.13による比重選を行うことは意義がある。
[キーワード] イネ、比重選、イネシンガレセンチュウ
[担当] 広島農技セ・環境制御研究部
[連絡先] 電話082-429-2592、電子メールngckanseigyo@pref.hiroshima.jp
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
 イネシンガレセンチュウは水稲の種子伝搬性線虫であり、多発すると収量低下や黒点米による 品質低下が起こる。水稲農家ではイネシンガレセンチュウ汚染種子を除去する目的で比重選が行われている。 しかし、これまでイネシンガレセンチュウ汚染種子を比重別に調査した研究はなく、比重選による汚染種子の 除去効果は不明である。そこで、イネシンガレセンチュウ寄生種子を比重別に調査し、比重選の意義を 検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 移植時にイネシンガレセンチュウ(株当たり3000頭)を接種したイネ(品種ヒノヒカリ) (線虫接種イネ)から採種した種子の内、比重の軽い種子(比重1.00未満の種子)、中程度の種子 (比重1.00以上1.13未満の種子)、重い種子(比重1.13以上の種子)の割合はそれぞれ、41.0%、 29.6%、29.4%となり、無接種のイネよりも重い種子の割合が低くなる (表1)。
  2. 線虫接種イネ由来の種子では、重い種子における線虫存在粒割合は、中程度の種子および軽い種子 よりも低い。また、重い種子は中程度の種子、軽い種子と比較して生存線虫数、死亡線虫数、 総線虫数のいずれも少ない(表2)。
  3. 線虫接種イネ由来の種子では、重い種子および中程度の種子の発芽率は軽い種子よりも高い。 重い種子および中程度の種子の発芽勢(試験開始7日後の発芽率)は軽い種子よりも高く、発芽までの 日数は短い。また、線虫接種イネ由来の種子と無接種の種子の間で比重毎の発芽率に2×2直交表検定で 有意な差はない(表3)。
  4. 以上のことから、水に浮く軽い種子は線虫寄生率が高いうえに発芽率も低いため、また、中程度の 種子の発芽率は高いものの、線虫寄生率が高いため、取り除く必要がある。このため、水稲種子を 比重1.13で比重選を行うことは意義がある。
[成果の活用面・留意点]
  1. 線虫汚染種子を完全に除去することはできないため、その後、種子消毒の必要がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 病害虫発生予察等事業
予算区分 国補
研究期間 2003年度
研究担当者 星野 滋
発表論文等 Togashi・Hoshino (2003) Nematology 5:821-829

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