[成果情報名]

タマネギ残さ炭化物の露地野菜への効果的施用法

[要約]  タマネギ残さ炭化物の育苗培養土への5〜10%混合でレタスやタマネギ苗の生育が促進される。 本圃への100〜400kg/10a施用で土壌容積重が減少、保水性が向上しタマネギの収量が増す。ハクサイ定植時 植え穴5〜20g混和で根こぶ病が抑えられ収量が増す。
[キーワード] タマネギ、炭化物、生育促進、土壌改良、根こぶ病
[担当] 兵庫農総セ・淡路農技・農業部
[連絡先] 電話0799-42-4880、電子メールshouji_kobayashi@ pref.hyogo. jp
[区分] 近畿中国四国農業・野菜
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 淡路地域のタマネギ生産量は年間約11万トンになるが、腐敗や調製などにより残さ量は生産物の 約10%と、その処分が問題である。炭化処理は、高温で殺菌するため病害発生の恐れがなく、資源の 再利用を進める有効な手段と考えられる。
 これまでに、タマネギ炭化物は、木炭に比べカリウム他のミネラル成分が豊富で、500kg/10a施用までは 土壌の可給態窒素やリン酸は増加しないことを報告した(近中四農研成果情報2005.牧ら)。
 ここでは、タマネギ炭化物の野菜に対する効果的な施用法の確立を目的に、育苗培養土への混合、 本圃への施用、植え穴への局所施用について検討した。
[成果の内容・特徴]
  1. タマネギ残さを約500℃で2〜3時間炭化すると、容積重が137g/Lと小さく、カリウム、 カルシウムの灰分含量が高く、pHが高い特徴を持った炭化物となる (表1)。
  2. セル育苗培養土へタマネギ炭化物を5〜10%(v/v)混合すると、レタス苗の草丈・地上部生重、 タマネギ苗の葉鞘径・地上部生重が大きくなり、生育が促進される (図1)。
  3. 本圃へは、400kg/10aまで施用量が増すほどタマネギの2L球の収穫割合が高くなり総収量が増加する。 土壌容積重は、施用量が増すほど小さくなり、土壌の三相分布では、気相率が無施用の40.6%から 400kg/10a施用により34.0%に低下し、液相率が14.9%から18.0%に高くなり、土壌水分の保持力が増す (図2)。これらの土壌改良効果やミネラル成分の補給が収量の 増加をもたらすと考えられる。
  4. ハクサイ定植時の植え穴に炭化物を混和すると、根こぶ病の発病程度は施用量が増すほど軽くなり、 20g区は対照薬剤区と同等の発病抑制効果が認められる。収穫球重も、施用量が増すほど大きく、 10g区で対照薬剤区と同等となり、収量は、無施用区の5.5t/10aに対し、炭化物施用10g、20g区では 9t/10a以上と高くなる(表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. タマネギ残さの炭化処理施設は平成18年に南あわじ市で複数箇所に導入され、1つの施設での タマネギ残さの処理能力は、200kg/hで1日当たり1.6tとなり、約50kgの炭化物が生産され、 JAや南あわじ市で1袋40Lを300円で販売されている。
  2. 育苗培養土への混合比率が10%を超えると、pHが高くなり初期の生育が抑制されるため、 培養土への混合は10%までとする。
  3. ハクサイの定植時植え穴混和処理は、20g/株で根こぶ病に対する発病抑制効果は最も高いが、 定植後の生育がやや遅れ、その後生育は回復する。10a当たりのコストについては、 スルフルファミド粉剤20kg土壌混和処理で約8,500円の薬剤費を要するのに対し、10g/株穴施用で 1,800円の資材費と植え穴混和処理の作業が必要となる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 農林水産業の副産物あるいは廃棄物の炭化をはじめとした各種資源循環法の開発
予算区分 県単
研究期間 2003〜2005年
研究担当者 小林尚司、大塩哲視、西口真嗣、牧 浩之(農林水産環境部)
発表論文等 特許出願番号2007-17400「土壌病害発病抑制資材と植物の育苗・定植方法」

目次へ戻る