[成果情報名]

肥料制限苗に適した野菜品目

[要約]  カリフラワー、キャベツ、ケールおよびコールラビは、緩効性肥料を含む培地に播種し、追肥を 行わないで灌水のみで慣行の2〜3倍の程度の期間セル育苗すると、育苗期間中は出蕾せず、虫害発生程度が 低下し、耐乾燥性を有する苗が育成される。
[キーワード] セル苗、肥料制限、虫害発生程度、耐乾燥性
[担当] 奈良農総セ・研究開発部・生産技術担当・野菜栽培チーム
[連絡先] 電話0744-22-6201、電子メールyoneda@naranougi.jp
[区分] 近畿中国四国農業・野菜
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 ブロッコリーのセル苗では緩効性肥料を含む培地に播種し追肥を行わないで灌水のみで育苗することで 硬くしまった苗が得られ、育苗中に出蕾せず虫害発生程度が低下することや、定植直後の土壌の乾燥に対し 耐性を持つことが確認されている。また、定植後は初期生育が劣るものの正常に収穫できる。そこで、 ブロッコリーと同様に、セル育苗時に施肥を制限することで、優位性を見出すことができる品目の検索を行う。
[成果の内容・特徴]
  1. 緩効性肥料をN成分量で150mg/l含む培地に播種し、灌水のみで、慣行の2〜3倍程度の期間育苗し 得られるセル苗(以下、肥料制限苗)は、慣行苗と比較し、以下のような特徴を有する。
    1)Brassica oleracea L.に属するカイラン、カリフラワー、キャベツ、ケールおよび コールラビでは、収穫期の遅延、収穫量の低下といった傾向がみられるものの、育苗中は多くの品目で コナガ等の虫害発生程度が低下する(表1表2)。
    2)葉ネギ、チンゲンサイ、ホウレンソウ、ナス、およびトマトでは、収穫期が遅延し、収穫量が 低下する傾向がみられ、育苗中に虫害発生程度の低下は観察されない (表1)。
    3)レタス、リーフレタス、ピーマン、およびスイートコーンでは生産力が明らかに低い (表1)。
  2. カリフラワー、キャベツ、ケールおよびコールラビの肥料制限苗は、慣行苗と比較し、培地の乾燥に 対し高い耐性を有し、長期の育苗を行った場合にも出蕾しない (表1表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 播種作業の労働分散や定植適期幅の拡大が必要な場合に有効な手段である。
  2. 落下葉の腐敗を防ぐため、灌水は給水マットを敷設し、底面給水により行う。
  3. セル外へ根が伸長するので、給水マットの上に防根シートを敷く。
  4. 育苗が長期に及ぶ場合には、セルトレイ上の落下葉は適時除去する。
  5. 定植し新葉が展開した後の虫害発生は慣行苗と同程度になることを観察している。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 常温貯蔵が可能で不良環境・病害虫に強いスーパーセル苗の開発
予算区分 先端技術を活用した農林水産研究高度化事業
研究期間 2004〜2006年
研究担当者 米田祥二、西本登志、前川寛之、矢奥泰章、後藤公美

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