[成果情報名]

ダリア茎頂培養系統の挿し芽による効率的な増殖技術

[要約]  ダリアの茎頂培養苗は、挿し芽時の発根と初期生育に優れる。1対の展開葉を付けた穂木の 128穴セルトレイへの挿し芽により、2〜3週間で定植苗が得られ、培養苗1個体から当年内に100球以上の 種球が得られる。
[キーワード] ダリア、挿し芽、茎頂培養、球根生産、ウイルスフリー
[担当] 奈良農総セ・研究開発部・花き栽培チーム
[連絡先] 電話0744-22-6201、電子メールnaka@naranougi.jp
[区分] 近畿中国四国農業・花き
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 ダリアは塊根で栄養繁殖されるため、ダリアモザイクウイルス(DaMV)等の汚染による生産性低下が 問題となっている。これに対し茎頂培養法によるウイルスフリー化の有効性が知られているものの、 馴化から種球生産までに数年を要するため実用上の障害となっている。そこで培養苗から球根生産までの 期間を短縮することを目的として、挿し芽による種球増殖方法を検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 茎頂培養苗を親株にすると、発根と初期生育に優れるため、挿し芽繁殖が容易となる (表1)。
  2. 茎頂培養苗由来の親株は深夜4時間の暗期中断下で管理して、花芽分化を抑制する。この条件下では 茎長70〜85cm、分化葉数12節に達しても花芽分化しない(データ略)。
  3. 親株への施肥量が多いほど挿し芽苗の生育は良好になるが、被覆燐硝安加里肥料4g/L(N:480mg/L)混和では、 親株に葉やけが生じる。このため、同2g/L(N:240mg/L)を混和した培養土で茎頂培養苗を鉢上げし、 22℃16時間日長下で馴化後、雨除けハウス内で鉢栽培のまま管理して親株とする (表2)。
  4. 1〜2対の腋芽と1対の展開葉を残して調整した挿し穂(天4節)およびかぎ芽で、良好な発根と成長が 得られる。ただし、かぎ芽では親株の採穂数が得られないため、1節以上の展開葉を親株上に残して、 天4節で採穂する。挿し芽は128穴セルに行い、間欠ミスト下で2〜3週間育苗する (表2)。
  5. 親株摘心時にダミノジット1.6%液を茎葉散布すると、穂木の下位節間が短縮されるため、秋の分球時に芽数を 確保しやすい(表3)。
  6. 挿し穂の冷蔵は、2℃暗黒条件下で約2週間まで可能であり、作業の調整・配分に利用できる(データ略)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 育苗日数が長すぎると、根巻きのために塊根形状が悪くなる。このため、高温期の育苗日数は、 128穴セルトレイで3週間までとする。
  2. 親株からの増殖を3月上旬に開始し育苗期間を3週間とすれば、6月下旬までに約50株の定植苗が 得られる。また慣行の球根生産同様の管理によって、3球/株が得られるため、当年内に1株の 培養苗から約100球以上の種球が見込める。
  3. ダリアに対するダミノジット剤の使用にあたっては、農薬登録が必要となる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 難除去性病原体フリー化および高感度検出技術の開発と実用化
予算区分 高度化事業(新規に開発した病原体フリー植物作出系のマニュアル化とその展開)
研究期間 2005〜2007年
研究担当者 仲照史、前田茂一、角川由加
発表論文等 奈良県農業総合センター研究報告No38(印刷中)

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