[成果情報名]

環状はく皮と着果負担の軽減の組み合わせによる温暖地ブドウの着色向上

[要約]  環状はく皮と着果負担の軽減を組み合わせると、着色向上効果が大きく、温暖地で栽培されている 赤色ブドウ「安芸クイーン」の着色改善に有効である。
[キーワード] 安芸クイーン、環状はく皮,着果負担、着色、ブドウ
[担当] 広島農技セ・果樹研・落葉果樹研究室
[連絡先] 電話0846-45-5472、電子メールngcrakuyou@pref.hiroshima.jp
[区分] 近畿中国四国農業・果樹
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 広島県の瀬戸内沿岸地域では成熟期の気温が高く、ブドウの着色が不良となりやすい。特に赤色品種の 「安芸クイーン」でその傾向は顕著であり、着色不良果は価格が大きく低下する。環状はく皮は着色を 向上させることが古くから知られているが、単に環状はく皮を行うだけでは効果は小さく、 温暖地ブドウの着色向上には不十分である。ここでは、温暖地ブドウの着色を向上させる技術として、 環状はく皮と着果負担の軽減を組み合わせた処理について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 環状はく皮および着果負担の軽減は、単独の処理では着色向上効果が小さいが、両者を 組み合わせると果皮のアントシアニン含量が大きく向上する (図1)。
  2. 着果負担の多少にかかわらず、環状はく皮処理は新根の発生を約2週間停止させる (図2)。しかし、はく皮部がゆ合した後、着果負担が 少ない場合には根が旺盛に伸長し、7月末には無処理樹と同等となる。なお、翌年の生育はすべての 処理区間に差がない(データ略)。
  3. 温暖地域の着色不良園では着果量を11〜27%軽減し、環状はく皮することによりカラーチャート値と 糖度が向上する(表1)。着色の向上程度は着果量が少ないほど 大きい。
  4. 環状はく皮は袋掛けの終わった余剰労力のある時期に行うことができ、作業時間は1樹あたり 3〜5分、10aあたり2〜4時間である。一方、房数を1〜3割減らすと、摘粒作業が7〜21時間、 袋掛け作業が2〜6時間、収穫・出荷作業が17〜51時間減少する。
  5. 「安芸クイーン」は等級により単価が大きく異なる。着果負担の軽減により収量が減少するが、 カラーチャート値が3以上の秀品の割合が増加し、粗収入は大きく増加する (表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 環状はく皮は満開後30〜35日に主幹部に5mm幅で処理し、師部組織を完全に除去したことを確認後 (残った師部組織は時間が経つと褐変する)、はく皮部のゴミを取り除き、幅の広いビニルテープで 被覆する。約1ヶ月後にテープを除去する。
  2. 着色開始期に葉色が濃く、窒素の遅効きにより着色が著しく不良な場合は、十分な着色向上効果が 得られない場合がある。
  3. 環状はく皮は着色とともに糖度を上昇させるが、酸含量は変わらない場合も多いので、未熟果を 収穫しないように注意する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 高温ストレスによるブドウ果実の成熟異常防止技術の開発
予算区分 受託(気候温暖化プロジェクト)
研究期間 2003〜2007年
研究担当者 山根崇嘉、柴山勝利
発表論文等 Yamane・Shibayama (2006) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 75:439-444

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