[成果情報名]

早生ウンシュウのマルドリ栽培における高水圧剥皮機を利用した土壌改良

[要約]  早生ウンシュウのマルドリ栽培において高水圧剥皮機の水圧を利用するとかん水チューブを 切断することなく土壌改良用の穴が掘削でき、軽労化できる。さらに掘削した穴にバーク堆肥を 投入することで、慣行の堆肥の表面散布と比べて連年安定生産が図られる。
[キーワード] ウンシュウミカン、マルドリ栽培、高水圧剥皮機、土壌改良、連年安定生産
[担当] 香川農試府中分場・栽培担当
[連絡先] 電話0877-48-0731、電子メールvj1524@pref.kagawa.lg.jp
[区分] 近畿中国四国農業・果樹
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 香川県内におけるウンシュウミカンのマルチ栽培では、耕土が浅いため、夏季の過乾燥により樹勢が 衰弱しやすく、収量の低下や隔年結果を助長する要因となっている。従来の部分深耕による土壌改良方法は、 重労働であるだけでなく、使用する農具でかん水チューブを切断しやすいこともあり、十分に 行われているとは言い難い。そこで、マルドリ栽培において軽労働で収量と隔年結果が改善できる 土壌改良作業について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 落葉果樹等の粗皮削りに使用される高水圧剥皮機の水圧(90kgf/cm2程度)を 利用すると、土壌表面の点滴かん水チューブを切断することなく、土壌改良用の穴(直径25cm、深さ30cm 程度)を容易にかつ楽な姿勢で掘削できる(図1)。
  2. この方法を用いて、早生ウンシュウ10年生樹で、休眠期に1樹あたり8カ所の穴を掘削し、20kg (1穴あたり2.5kg)のバーク堆肥を投入する作業(たこつぼ区)は、掘削を行わず地表面のみに バーク堆肥を施用する方法(表面施用区)と比較して、作業時間は長くなるが、作業中の心拍数および 心拍増加率はわずかに低くなり同程度の軽労化が期待できる(データ省略)。
  3. 土壌改良を行うことにより、たこつぼ区では処理前と比較して塩基置換容量が高くなり、 孔隙率および透水係数が改善され、高い土壌の改良効果が得られる (表1)。
  4. 土壌改良を4年間継続して行うことにより、4年間を通して細根の重量は増加し、根の活性を示す 細根1g当たりのフォルマザン生成量は多くなる(図3)。
  5. いずれの土壌改良方法を行っても早生ウンシュウ果実品質に差はなく、4年間継続して、たこつぼに よる土壌改良を行うことにより、樹冠容積1m3当たり収量は多く、隔年結果による収量の 年次変動を軽減することができる(図4)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 排水性の良い土壌(花崗岩風化土壌等)に植栽された早生ウンシュウのマルドリ栽培での適用性が 高い。
  2. マルドリ栽培以外の園地や早生ウンシュウ以外のウンシュウミカンでも適用できると考えられるが、 隔年結果軽減のためには、樹勢や品種に応じた摘果等の栽培管理と併用するのが望ましい。
  3. 1穴の掘削には、約10リットルの水が必要である。
  4. 土壌改良用の穴を掘削する位置、穴の数及び大きさは、従来の部分深耕による土壌改良に準じて 決定し、未熟な有機質資材の使用は控える。
  5. 土壌改良を毎年行わなくても、2〜3年程度は土壌改良効果が維持できるが、隔年結果の軽減効果は 少なくなる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 カンキツ経営安定のための連年果実生産システムの開発
課題ID 213-f-01-001-05-M-06
予算区分 交付金プロ(カンキツ連年生産)
研究期間 2003〜2007年
研究担当者 森末 文徳、山地 茂伸、川原 清剛
発表論文等 森末ら(2005)園芸学会中四国支部会第44号:20

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