[成果情報名]

黒色化繊布被覆による長期貯蔵ユズの「こはん症」発生防止技術

[要約]  8月上旬〜9月上旬に、黒色化繊布でユズ果実を被覆すると、長期貯蔵中の果皮障害である 「こはん症」の発生を大幅に軽減できる。
[キーワード] ユズ、果皮障害、こはん症、黒色化繊布、果実被覆
[担当] 高知農技セ果樹試・常緑果樹科
[連絡先] 電話 088-844-1120、電子メールmitsutoshi_tanaka@ken3.pref.kochi.jp
[区分] 近畿中国四国農業・果樹
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 ユズの長期貯蔵では、果頂部が水浸状に褐変する「水腐れ症」と赤道部周辺の果皮が不規則に窪んで 褐変する「こはん症」と呼ばれる果皮障害が発生する。「水腐れ症」については、高温予措(30℃で 3〜5日間)による防止技術が普及しているが、一方の「こはん症」については、(1)収穫時期を遅く (11月中旬〜下旬)すると発生が少ない。(2)変温貯蔵(収穫〜2、3ヶ月は5℃、その後3℃で貯蔵)で 発生が軽減されること等が明らかになっているものの、効果の高い防止技術ではなく、収穫期間が 限られることや変温貯蔵による果皮の橙色化等の問題があった。
 近年、赤道部から下部に着果した果実では「こはん症」の発生が少ないことや生育期間中の日照時間が 「こはん症」の発生に影響を及ぼすことが明らかになってきた。そこで、生育中の果実への化繊布被覆による 「こはん症」の発生軽減技術を確立する。
[成果の内容・特徴]
  1. 8月上旬〜9月上旬に、黒色化繊布(商品名:サンテ)で果実を被覆することで、長期貯蔵中の 「こはん症」発生を大幅に軽減できる (図1)。
  2. 黒色化繊布で被覆した果実は、収穫、高温予措後に3℃で貯蔵することで、変温貯蔵よりも 「こはん症」の発生が少なく、果皮の橙色化程度も低い (図3)。
  3. 黒色化繊布で被覆することで、日焼け果や風傷果が少なくなり、青果での出荷率が向上し、収穫時に 期待される価格は1果当たり15円程度上昇する(表1)。
  4. 果実の被覆は、1日に900〜1,500枚程度が可能で、人件費を含んだ1果当たり経費は11〜14円程度で ある(データ省略)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 黒色化繊布の被覆は、赤道部より下部の果実を主体に行い、10月下旬〜11月上旬に採取する。上部を 接ぎ木クリップ等で止めることで強風等による化繊布の落下が防止できる。
  2. 「こはん症」および日焼け果の発生には黒色化繊布被覆だけでも効果があるが、それらの発生の多い 園地では外側を白、内側を黒の化繊布で二重にして被覆すればより効果的である (図2)。
  3. 黒色化繊布被覆により「水腐れ症」の発生が多くなる年が認められたので、3月以降は果実を こまめに点検し、「水腐れ症」が見え始めたら早めに出荷する。
  4. 被覆内でフジコナカイガラムシ等が増殖する恐れがあるので、事前に防除を行っておく。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 ユズの長期貯蔵に関する研究
予算区分 県単
研究期間 2003〜2005年
研究担当者 山本正志、橋田祐二、小松秀雄

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