[成果情報名]

肉用繁殖牛の皆伐竹林での放牧がタケノコの発筍に及ぼす影響

[要約]  モウソウチクの皆伐竹林に放牧中の肉用繁殖牛は、丈が2m程度までのタケノコを好んで採食し、 竹林の拡大防止に有効である。
[キーワード] 肉用牛、放牧、タケノコ、竹林、採食率
[担当] 京都畜技セ碇・管理部
[連絡先] 電話0772-76-1121、電子メールn-ohta11@pref.kyoto.lg.jp
[区分] 近畿中国四国農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 京都府内の中山間地域では、高齢化や労働力不足により、農林地の荒廃化や獣害が深刻化している。 加えて地下茎の繁殖力が旺盛なモウソウチクが隣接地へと年々拡大し、農林地を竹林化して問題と なっている。そこで、林業と畜産の連携により竹林を含むエリアに肉用牛を放牧させて、タケノコ等の 採食性と竹林の拡大抑制効果を調査する。
[成果の内容・特徴]
  1. タケノコの採食性と栄養価
    1)タケノコ(モウソウチク)の栄養成分はタイプにより異なるが、水分は約86〜91%、乾物中の CP 含量は約14〜20%、NDF は約61〜69%、ADFは約24〜34%である (表1)。
    2)肉用繁殖牛のタケノコの採食性は、丈が2m程度までのものは10kgを約2時間で食べ尽くす。 また、長さ約5cmに輪切りにしたものは、30kgを約3時間で採食する。
  2. 皆伐竹林への放牧による竹林拡大抑制効果
    里山周辺エリアに農地と野生動物が生息する山林を隔てる皆伐竹林21a(2006年1月下旬〜3月上旬に 約1,100本を伐採)を含む334aのバッファーゾーンを設置し、肉用繁殖牛2頭を3月末〜11月末までの 約8か月間放牧した(表2)。
    1)皆伐竹林内に発生するタケノコは通常よりやや小型の直立型(初見時の形状比 (竹高(mm)÷直径(mm)×10)が50以下)と、人差し指ほどの太さの倒伏型(初見時の形状比50以上)の 2つに分類できる。直立型は4月12日〜6月28日に310本/10a 発筍し、倒伏型は5月9日〜 12月7日に 2,493本/10a発筍した。発筍最盛期は直立型が5月上旬、倒伏型が6月上旬〜下旬である (図1)。
    2)肉用繁殖牛のタケノコの採食行動は4月〜11月までの全期間で認められ、当年における モウソウチクの生長抑制効果は顕著である。採食率(採食本数÷発筍本数×100)は、直立型97.4%、 倒伏型97.6%であり(図1)、急峻地を除くほとんどのタケノコを 採食する。
    3)タケノコの1日当たりの推定採食量は、直立型、倒伏型別に1〜2週間に1回生えている タケノコの稈長、稈径から重量を推定する方法で求めたところ、5月上旬に最も多く、 7.7kg(DM 0.88kg)/頭である(図2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. タケノコの嗜好性は良好で放牧地でもよく採食するが、竹林以外に良質なイネ科野草等がある 場合はタケノコの採食性が低下する可能性がある。
  2. タケノコの量や竹林の牧養力は、放牧密度や皆伐前の竹林の叢生密度、皆伐後の経過年数、 タケの種類等により変化する。
  3. 放牧牛は事前にタケノコによる馴致飼育が必要である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 肉用繁殖雌牛のタケノコの採食性
緩衝地帯内の竹林における肉用牛放牧技術の確立
予算区分 府単
研究期間 継2005〜2008年度
研究担当者 太田典宏、吉岡正行
発表論文等 1)太田ら(2006) 京都畜技セ試研成績3及び4に掲載及び掲載予定

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