[成果情報名] | セルトレーを用いたブドウ「ピオーネ」の効率的な挿し木苗生産技術 |
[要約] | ブドウ「ピオーネ」の挿し木育苗に市販の固形培地を充填した72穴セルトレーを用いると、育苗圃の小面積化が図られるとともに、成苗率が高い。また、穂木基部の切り口を接着材でコーティングすることで成苗率はさらに高まる。 |
[キーワード] | ブドウ、挿し木苗、セルトレー、切り口保護剤 |
[担当] | 岡山農総セ・農試・果樹研究室 |
[連絡先] | 電話 086-955-0276 |
[区分] | 近畿中国四国農業・果樹 |
[分類] | 技術・参考 |
ブドウ「ピオーネ」の超密植栽培(10a当たり1,000本栽植)は、早期成園化や多収に有効であるが、大量の苗が必要である。苗コストを考慮すると自家育苗の必要性が高い。このため、できるだけ育苗圃の面積が小さく、成苗率の高い挿し木育苗技術の開発を検討する。
1.挿し床にはピートモス、パーライト、バーミキュライトを容量比60:20:20で混和した固形培土(商品名:エクセルソイル)を充填した市販の72穴セルトレー(各口部3.7cm正方形、深さ5.0cm)を使用する。フィルムヒーター(1.8m×1.0m、80W/u)を用いた温床(25℃設定)の上にパーライトを5cmの厚さに敷き詰め、セルトレーを埋設し、3月中〜下旬に1芽挿しを行う(図1)。挿し床はトンネル状にポリエチレンフィルムで被覆し、30℃以上にならないよう開閉する。
2.1,000本の挿し木を行うのに必要な面積は、9cmポットが8.3uであるのに対し、72穴セルトレーでは2.2uであり、約1/4の面積となる(図表省略)。
3.切り口保護は挿し穂の基部全面に木工ボンド(酢酸ビニル系)を塗布することで行う。塗布面を乾燥させた後、挿し木時まで約5℃下の冷蔵庫内で保存する。
4.発芽率はポリポットに比べて72穴セルトレーの方が高く、成苗率(展葉2枚以上で成長点を持つ定植可能な苗の割合)も高い(表1)。切り口保護を併用すると苗の切り口付近のカルス形成が優れ(図2)、成苗率がさらに高まる(表2)。
5.定植後の地上部の生育にはセルトレー育苗とポット育苗との差はない。また、定植翌年の収量、果実品質も同等である(データ省略)。
1.ブドウの密植栽培等、大量の苗を必要とする場合に活用できる。
2.培地が乾燥しやすいため、晴天が続けば展葉までは約3日毎、展葉後は毎日、培地が十分に湿るよう、培地表面の乾燥の有無を確認しながら潅水を行う。
3.移植適期を逃すと、定植後の初期生育が劣るため、展葉2枚以上となり成長点を有するうちに定植する。
[具体的データ]
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[その他] | ||
研究課題名 | :
超密植と灌水同時施肥による高収益型ブドウ生産システムの構築 |
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予算区分 | : 新たな農林水産施策を推進する実用技術開発事業 | |
研究期間 | : 2006〜2008年度 | |
研究担当者 | :
藤井雄一郎、小野俊朗 |
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発表論文等 | : 藤井、小野(2008) 近畿中国四国農研、13:33-37 |