[成果情報名]

野生獣の冬期の餌場価値を低減する畦畔・法面管理技術

[要約] 冬期の畦畔・法面の緑草は、10月下旬以降の草刈りやチガヤ、ヒガンバナ植栽により発生が抑制される。 また、ヒガンバナ植栽は、イノシシの掘り返しによる畦畔・法面の崩壊を防ぐ効果が高い。
[キーワード] チガヤ、ヒガンバナ、畦畔、法面、イノシシ
[担当] 滋賀農技セ・栽培
[連絡先] 電話0748-46-3082
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(鳥獣害)
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 全国的に野生獣による農作物被害が跡を絶たない状況にある。その一因として、冬期の畦畔・法面に 繁茂する緑草が野生獣のエサとなり農地依存度を高めていることが指摘されている。
 そこで、冬期の畦畔・法面の緑草を抑制する営農管理技術を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. 1月の草量は10月下旬以後に畦畔・法面の雑草を刈ることで約20%に低下でき、冬場の餌場価値を 低減できる(図1)。
  2. チガヤは法面に栽植後4〜6月に3回刈ることで被覆率、草丈とも大きくなり、法面を優占したまま 冬枯れるため、冬期の緑草量は減少する(図2)。
  3. ヒガンバナの優占法面では、被覆度が冬期に約90%に達し、イノシシによる掘り返しが認められない (図3表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果の導入にあたっては、優占草種、気象条件等の地域性を考慮する必要がある。
  2. チガヤの繁殖は6〜7月に採種して育苗するか、根株を掘り取って移植する方法があり、マット苗、 セル成型苗も市販されている。また、チガヤは遺伝的な変異が大きいため、いずれの繁殖法でも地域に 自生する株を利用することが望ましい。
  3. ヒガンバナの球根等は、植物神経毒のアルカロイドを有しているので、注意を要する。
  4. ヒガンバナを早期に繁茂させるには、稲作期間中に通常行う草刈り後、開花前(おおよそ9月下旬)に 花茎を切除するなどのきめ細かな管理を行う。
  5. チガヤ、ヒガンバナの植栽だけで野生獣の直接的な侵入を防ぐことは困難であるため、防護柵などと 併用することで獣害防止効果が高まる。
  6. 農地の餌場価値を低減するためには、ヒコバエや放棄果樹などのエサ資源を無くす対策とあわせて 実施する必要がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 営農管理的アプローチによる鳥獣害防止技術の開発
予算区分 受託(新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業)
研究期間 2007〜2009年度
研究担当者 山中成元、森茂之、高畑正人、河村久紀

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