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情報:農業と環境 No.102 (2008年10月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

第28回ハロゲン化残留性有機汚染物質国際シンポジウム(DIOXIN 2008)(8月17〜22日、英国(バーミンガム))参加報告

バーミンガム国際コンベンションセンター(写真)

写真 シンポジウム会場: バーミンガム国際コンベンションセンター

8月17日から22日まで、英国・バーミンガムで行われた第28回ハロゲン化残留性有機汚染物質国際シンポジウム (DIOXIN 2008) に参加しました。このシンポジウムは、ダイオキシン類を含む有害化学物質の分野で最大の会合で、今年は46か国から約800名が参加しました。この会合は米国環境保護局(EPA)を含む各国の環境研究機関が参加し、それぞれの政策や今後の展望などの情報を集められることから大変魅力を感じています。

学会場前で(写真)

写真 会場前で

私自身は昨年から韓国 K water、ドイツの Water Technology Center (TZW)、米国の Orange County Water District との共同研究を実施しており、そこで開発を担当した水における POPs 分析法に基づいて、小野川、西谷田川、十日川を調査した研究 (PERSISTENT ORGANIC POLLUTANTS (POPs) IN WATER FROM THE ONO, NISHI YATA, AND TOUKA RIVERS, JAPAN) の成果を発表しました。4か国の研究機関の連名としたためか関心が高く、新規分析法を紹介する良い機会になりました。

表1 緊急に対応が必要な POPs 候補

表1

表2 その他の懸念される POPs

表2

シンポジウムにおいて注目されたのは、PBDEs (ポリ臭素化ジフェニルエーテル)などの新規 POPs 候補に対する毒性およびリスク評価でした。とくに欧米では、ストックホルム POPs は減少しているが難燃剤として利用される臭素化化合物による人体暴露が上昇し続けており、アジアの10倍以上の人体暴露を示しているためにその危険性を警告する発表が多数ありました。

2004年から本年(2008年)までのこの国際シンポジウムでの発表課題をまとめると、以下のように暴露と毒性の研究が多く、フッ素・臭素化合物に関する研究が増えていることが分かります。また、POPs が長距離移動性の物性を持つために国家間の共同研究が継続していることも特徴であり、事故になどによる人体暴露の長期毒性と遺伝毒性的影響評価などの研究が増えています。

ハロゲン化残留性有機汚染物質国際シンポジウムにおける発表数の推移

分野 塩素化合物 フッ素/臭素化合物
年度 分析法 生成・復元 環境レベル・移動・影響 人体暴露 毒性 リスク評価
2004 136 72 189 77 78 62 62
2005 138 96 225 66 71 19 101
2006 74 97 99 164 39 21 128
2007 96 98 172 133 106 4 99
2008 65 67 100 194 47 51 98

さまざまな課題の中で個人的にはエジプトのミイラにおけるダイオキシン類の研究成果発表は非常に面白く、参加者の関心も高いものでした。

来年のシンポジウムは、8月23日〜28日の間に中国の北京で開かれる予定 ( http://www.dioxin2009.org/ (対応するページが見つかりません。2011年10月)) であり、アジアからの多数の参加が期待されています。

(有機化学物質研究領域 殷 煕洙)

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