1 豚の橈尺骨骨幹部の過骨症 〔萩原妙子(千葉県)〕

 LWD種,雌,2日齢,鑑定殺例.母豚1,800頭規模の一貫経営農場で,出生時から四肢の一肢以上に腫脹を示す新生豚が11腹13頭みられた.一腹あたりの発生頭数は1〜3頭であった.母豚の産歴はさまざまだったが,種付日が共通しているものが多く,同一の種豚場から購入した混合精液が供用されていた.本症例は2009年3月30日に出生し,両前肢前腕部の腫脹を呈した1頭である.

 剖検では,両前肢前腕部は骨幹部の直径が11.5cmに腫大し,硬結感があった.横断面では橈尺骨周囲の線維増生と骨皮質の肥厚がみられた.

 組織学的に,橈尺骨(提出標本)の骨膜は,線維層の膠原線維の増生及び骨形成層の骨芽細胞の増数により肥厚していた.骨膜と正常な緻密骨との間に,放射状の未熟な骨梁が多量に形成されており(図1),大きな核を持つ多数の骨芽細胞と骨細胞がみられた.橈尺骨の周囲には,粘液性基質を伴う結合組織の高度の増生がみられ,萎縮した骨格筋線維や未発達な骨格筋線維が,結合組織に埋もれて認められた.

 病原検索では,主要臓器から病原細菌は分離されなかった.

 以上から,本症例は豚の先天性過骨症と診断された.豚の先天性過骨症は,常染色体劣性遺伝によると考えられているが,原因遺伝子及び発生機序等は特定されておらず,今後もこの農場における同様の症例の発生を注視していく必要がある.

豚の橈尺骨骨幹部の過骨症