21 豚の Lawsonia intracellularis による増殖性結腸炎 〔小山朗子(東京都)〕

 交雑種,雌,3カ月齢,鑑定殺例.子取り出荷を行っている教育施設において,離乳後に下痢を呈して死亡する子豚がみられたため,別腹,同一豚房の2頭について病性鑑定を実施した.下痢は水様泥状で白い偽膜を混じていた.

 剖検では,空腸下部から結腸にかけて粘膜の肥厚が認められ,粘膜面には軽度に偽膜が付着していた.漿膜面に白色結節が散見された.

 組織学的には,結腸(提出標本)で陰窩上皮細胞が多巣状〜び漫性に中等度から高度に過形成していた(図21).過形成した陰窩上皮細胞はその丈を伸長し,細胞質は好塩基性を増し,自由縁では滴状突起がみられ,微絨毛は不明瞭となっていた.核は大きく,増数,重層化し,豊富なクロマチンを有し,核分裂像が多数観察された.杯細胞は減数していた.拡張した陰窩腔内には好中球を主体とする炎症細胞が軽度に浸潤し,バランチジウムが散見された.ワーチン・スターリー染色により,過形成した陰窩上皮細胞内自由縁に弯曲した桿菌が多数観察され,抗 Lawsonia intracellularis 抗体(帯広畜産大学)において陽性反応が確認された.粘膜面の一部で,表層上皮の壊死と線維素の析出が認められ,剖検所見でみられた白色結節では,孤立リンパ小節部位へ陰窩が落ち込み,内部に細胞崩壊産物が貯留していた.

 病原検索では,腸管内容を用いた L. intracellularis のPCR検査で特異遺伝子が検出された.

 以上から本症例は豚の増殖性腸炎と診断され,典型例 と思われた.

豚のLawsonia intracellularisによる増殖性結腸炎