27 牛のRSウイルスによる好酸性細胞質内封入体を認めた合胞体形成性壊死性気管支間質肺炎 〔梁川直宏(鳥取県)〕

 黒毛和種,雌,3カ月齢,死亡例.繁殖・肥育一貫経営農場において平成21年4月に育成群に発熱,発咳の症状がみられた.5頭の鼻腔スワブでRSウイルス(RSV)簡易キットによる検査を行ったが結果は陰性であった.翌日1頭が死亡したため病性鑑定を行った.

 剖検では左右の肺は全体の3/4で肝変化し,気管支腔内に膿状物を認め,肺門リンパ節は腫大していた.第二,三胃の境界部粘膜の水腫及び出血,四胃幽門部に潰瘍が多数認められた.

 組織学的に,肺(提出標本)では肺胞内に単核細胞が浸潤し,硝子膜形成がみられた.細気管支腔内は退廃物,好中球等で満たされ,粘膜上皮細胞は壊死が顕著で,まれに合胞体の形成と好酸性細胞質内封入体が認められた(図27).第四胃では潰瘍の形成がみられ,腸間膜リンパ節は水腫性に腫大していた.

 細菌学的検査において,肺は病原細菌分離陰性であったが,鼻腔スワブから Pasteurella multocida が分離された.気管スワブを用いた牛RSV(BRSV),パラインフルエンザウイルス3型(PIV-3),牛ヘルペスウイルス1型(BHV-1)の遺伝子検査ではBRSVのみが検出された.ウイルス分離では,Vero細胞4代目でBRSVが分離された.生存育成牛ペア血清のBRSV,牛ウイルス性下痢病ウイルス1型,2型,BHV-1,PIV-3,アデノウイルス7型の中和試験ではBRSV抗体のみ上昇がみられた(3頭/4頭).肺組織の抗BRSVヤギ抗体(VMRD)を用いた免疫組織化学的検査では病変部の細気管支粘膜上皮細胞質内に陽性反応が認められた.

 以上のことから,本症例は牛RSウイルス病と診断さ れた.

牛のRSウイルスによる好酸性細胞質内封入体を認めた合胞体形成性壊死性気管支間質肺炎