21 子牛の化膿性腎炎,貧血性梗塞 〔佐織コ彦(兵庫県)〕

 黒毛和種,雄,5カ月齢,鑑定殺.繁殖雌牛22頭飼養の和牛繁殖経営農家において,2009年11月20日生まれの子牛に,2010年3月頃から尿路結石が認められ,4月14日に尿道閉塞に陥った.尿道瘻形成手術及び補液を行うも予後不良のため4月19日に病性鑑定を実施した.

 剖検で病変は泌尿器に主座した.尿管は拡張し,腎臓は著しく腫大し出血や貧血性梗塞が散在した.割面では腎盂が拡張し,帽針頭大の結石を少数認めた.一方,膀胱は拡張し,漿膜面に出血があり,内腔に大小の結石を多数認めた.腹腔内には黄褐色の腹水が貯留していた.

 組織学的には,腎臓は髄質から腎乳頭にかけてび漫性に貧血性梗塞が著明であり,周辺部に出血がみられた(図21).また腎盂の血管に血栓を認めた.皮質の間質には散在性に多形核白血球が浸潤し,一部尿細管に尿円柱が認められた.膀胱の粘膜固有層にリンパ球が浸潤し,粘膜上皮には散在性にリンパ濾胞が形成されていた.また漿膜面は水腫様であった.

 主要臓器については細菌学的検査を実施したが,菌分離は陰性であった.

 本症例では,腎臓皮質に多形核白血球がみられたため,化膿性病変が先行して血栓が形成され梗塞がみられたと考えられた.菌分離陰性の理由として,加療時の抗生物質投与の影響が考えられた.

子牛の化膿性腎炎,貧血性梗塞