10 キンクロハジロの高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)による多発性心筋壊死 〔入部 忠(山口県)〕

 キンクロハジロ,雄,年齢不明,斃死例.2011年2月6日,公園内において衰弱したキンクロハジロが発見された.同鳥はまもなく斃死したため,県防疫マニュアルに従い回収,病性鑑定を実施した.

 剖検では,心臓に黄白色多発性微小壊死が心筋線維に沿うようにスジ状にみられ,膵臓に多発性白色壊死が認められた.

 組織学的に,心臓では多発性に心筋の壊死が認められた.壊死部では,主としてマクロファージ,まれに偽好酸球及びリンパ球の浸潤がみられた(図10).その他臓器において,膵臓では多発性の壊死,脳では囲管性細胞浸潤を伴う軽度の非化膿性脳炎,消化管筋層間神経叢等における神経節炎,全身性の充うっ血が認められた.マウス抗A型インフルエンザウイルスMatrixモノクローナル抗体(Serotec)を用いた免疫組織化学的染色では,壊死した心筋線維に一致して陽性反応が認められた他,大脳の神経細胞,グリア細胞,小脳のプルキンエ細胞,膵臓の外分泌細胞,十二指腸の筋層間神経叢神経細胞において陽性反応が認められた.

 病原検索では,気管及びクロアカスワブを用いてRT-PCRを行ったところH5亜型インフルエンザウイルス陽性であった.検体は鳥取大学に搬送され,H5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスと確認された.

 以上の結果から,本症例はキンクロハジロの高病原性鳥インフルエンザと診断された.

キンクロハジロの高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)による多発性心筋壊死