14 豚鞭虫による陰窩膿瘍を伴う粘液カタル性結腸炎 〔小山朗子(東京都)〕

 交雑種,去勢,5カ月齢,斃死例.24頭飼養の肥育農場で,2010年10月21日に導入した16頭のうち,12月21日に斃死した豚1頭を病性鑑定した.農場は放牧飼育で,床面は土壌,土壌の更新は頻回ではなかった.導入元では内部寄生虫駆除剤が投与されていたが,導入後の薬剤投与はなかった.

 剖検時の体重は40kgで,眼窩陥凹し,肝臓全体に軽度の線維化があり,結腸腸間膜は軽度に水腫性で,結腸漿膜面は混濁し,直径約5mmの黄色結節が多発していた.回腸から直腸の内容物はヘドロ状で悪臭があり,多数の白色の線虫が絡み合って認められた.採取された線虫は,豚鞭虫の成虫(第5期)と確認され,直腸便中の鞭虫卵は1グラム中110,000であった.

 組織学的には,結腸は粘膜が重度に肥厚し,粘液分泌が亢進,陰窩は拡張していた.粘膜表層では虫体の横断面が観察され(図14),その周囲には脱落した粘膜上皮細胞と多数のグラム陰性菌,虫卵,食魏,線維素が認められた.剖検で認められた黄色結節は陰窩膿瘍で,内部には変性した炎症細胞,多数の細菌,粘液及び虫体を含む壊死組織が認められた.Warthin-Starry染色により陰窩に菌体は確認されず,類症鑑別疾病の豚赤痢を否定した.

 以上の結果より,本症例は豚鞭虫症と診断された.

豚鞭虫による陰窩膿瘍を伴う粘液カタル性結腸炎