24 牛の Histophilus somni による血栓形成と壊死を伴った化膿性線維素性髄膜小脳炎 〔荒木美穂(沖縄県)〕

 交雑種,雄,4カ月齢,斃死例(死後6時間以上).3頭の育成牛が斜頸,旋回等の神経症状を呈し,抗生剤等で治療,2頭は回復したが当該牛は斃死し,病性鑑定を実施した.

 剖検では,肺胸膜が癒着し,肺左右前葉が硬結肝変化を起こし,チーズ様物が貯留しており,心外膜と癒着していた.脳では髄膜が混濁し,大脳及び小脳表面に出血があり,小脳虫部では髄膜の混濁肥厚が顕著であった.

 組織学的には,小脳で皮質が広範囲に壊死し,微小膿瘍,血栓,出血及び血管炎が多発しており,特に髄膜での血管病変と線維素の析出が顕著であった(図24).大脳と脊髄で同様の病変が軽度にあり,脳底部髄膜への好中球浸潤が重度であった.その他の臓器では,肝,心,胸腺,消化管及び左後肢骨格筋に血栓,血管炎及び化膿病巣が多発又は散在していた.肺では小葉間が拡張し線維素が析出しており,壊死巣を取り囲んで変性した好中球が集簇し,気管支腔には炎症細胞が充満していた.抗 Histophilus somni 家兎血清(沖縄県家衛試)を用いた免疫組織化学的染色では,小脳の壊死病変部に加え,病巣周囲の血栓内や血管壁にも陽性反応が認められた.

 病原検索では,大脳,小脳,肺から H. somni ,また肺から Pasteurella multocidaUreaplasma diversum が分離された.脳幹部,脊髄,脳脊髄液からのウイルス分離は陰性であった.

 本症例は H. somni 感染症の敗血症型と診断され,小脳での重度病変形成が特徴的であった.

牛のHistophilus somniによる血栓形成と壊死を伴った化膿性線維素性髄膜小脳炎