27 牛RSウイルスによる合胞体及び細胞質内封入体形成を伴う気管支間質性肺炎 〔宮澤国男(北海道)〕

 ホルスタイン種,雌,2カ月齢,斃死例.平成23年2月から農場内の哺育・育成牛に呼吸器病がまん延した.当該牛はワクチン未接種で発育不良と重度の呼吸器症状を示していたため抗生物質により治療したが,斃死したため病性鑑定を実施した.

 剖検では,肺の前葉,中葉は赤色肝変化して胸壁と軽度に癒着していた.後葉には1〜5cm大の気腫が散見された.気管には多量の白色泡沫状物が貯留していた.

 組織学的に,肺では,肺胞壁は軽度に肥厚し,U型肺胞上皮細胞の増生や多数の合胞体が認められた(図27A).肺胞腔内にはマクロファージ,好中球(図27A),線維素や漿液が充満していた.気管支や細気管支腔内には細胞残魏やマクロファージ,好中球がみられ,粘膜上皮細胞には変性や壊死がみられた.小葉間結合組織は水腫性に肥厚し,気腫も散見された.合胞体,細気管支上皮には,多数の好酸性細胞質内封入体がみられ,抗RSウイルスマウス抗体(ARGENE)を用いた免疫組織化学的染色では,合胞体,肺胞上皮細胞,細気管支上皮細胞や腔内の脱落細胞に多数の陽性反応が認められた(図27B).肝細胞の空胞変性,腎尿細管上皮細胞の変性や壊死,尿細管腔に出血や硝子円柱などもみられた.

 病原検索では,PCR検査で肺から牛RSウイルス遺伝子を検出した.牛ウイルス性下痢ウイルス及び牛コロナウイルス遺伝子は陰性で,細菌及びマイコプラズマ検査も陰性であった.

 以上の所見から,本症例は牛RSウイルス病と診断された.

牛RSウイルスによる合胞体及び細胞質内封入体形成を伴う気管支間質性肺炎