6 鶏の脊髄腰膨大部灰白質における鶏脳脊髄炎(AE)ウイルスによる非化膿性脊髄炎 〔万所幸喜(京都府)〕

 ボリスブラウン種,15日齢,鑑定殺.採卵鶏2,600羽を飼養する農場で初生雛400羽を導入したところ,約2週間後に振戦や起立不能を呈する雛が10羽程度発生した.発症した雛は食欲あり,便は正常で,外貌の異常は認められなかった.

 剖検では,検索した7羽中1羽の筋胃に軽度び爛を認めたが,他の著変はなかった.

 組織学的に,脊髄の灰白質において,変性萎縮した神経細胞が散見され,しばしばその周囲にグリア細胞の増殖を伴っていた(図6).まれに神経細胞の中心性虎斑融解や囲管性細胞浸潤が散見された.中心性虎斑融解は中脳や小脳の大型神経細胞でも認められ,囲管性細胞浸潤は大脳,中脳,小脳で観察された.心臓では心筋の間質にリンパ球の集簇像を認め,血管周囲の水腫性変化も散見された.リンパ球集簇像は肝臓,膵臓,筋胃,腺胃においても認められた.

 病原検査では,脳の生材料を用い,AEウイルス特異的遺伝子を標的としたRT-PCR法を実施したところ,6検体中3検体からAEウイルス遺伝子を検出した.

 以上の所見から,本症例は鶏脳脊髄炎と診断された.

鶏の脊髄腰膨大部灰白質における鶏脳脊髄炎(AE)ウイルスによる非化膿性脊髄炎