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酒造好適米水稲新品種候補「秋田酒こまち」の育成

[要約]
水稲「秋田酒こまち」は中生の酒造好適米品種である。本品種は栽培特性が優れると同時に、高品質で醸造特性も優れており、吟醸酒用原料米として、秋田県で奨励品種に採用を予定している。
[キーワード]
  秋田酒こまち、酒造好適米、高品質、秋田県、奨励品種
[担当]秋田農試・作物部・水稲育種担当、秋田総食研・酒類部門・酒類第一担当
[連絡先]018-881-3330、電子メールs-matsumoto@agri-ex.pref.akita.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
「米の秋田は酒の国」のキャッチフレーズを掲げる秋田の清酒ではあるが、県内の多くの酒造メーカーでは、吟醸酒等の高級酒の原料米として、他県産「山田錦」の使用が多い。一方、県内で最も多く生産されている「美山錦」は、耐倒伏性が弱く、腹白粒がでやすい等、栽培特性・玄米品質に難点がある。そのため、秋田県の気象に適応し「美山錦」以上の栽培特性と、「山田錦」並の醸造特性を兼ね備えた酒造好適米品種が、酒米生産者と実需者の双方から望まれている。
[成果の内容・特徴]
 
1. 「秋田酒こまち」は1992年に秋田県農業試験場において、「秋系酒251」を母、「秋系酒306」を父として人工交配し、選抜・固定を進めてきた品種であり、2000年F8より「秋田酒77号」の系統名を付し奨励品種決定試験で検討してきた。
2. 出穂期・成熟期ともに「美山錦」並の“中生の中”である(表1)。
3. 稈長が「美山錦」より短く、耐倒伏性は「美山錦」より強い(表1)。
4. いもち病抵抗性遺伝子型はPiaPiiと推定され、圃場抵抗性は「美山錦」並で葉いもちは“やや強”、穂いもちは“中”である。障害型耐冷性は“中”、穂発芽性は“やや難”である(表1)。
5. 玄米収量は「美山錦」並である。玄米は「美山錦」より大粒で外観品質に優れ、粗蛋白質含量が低い(表1)。
6. 玄米は眼状の心白の発現が良好で、精米試験では無効精米歩合が低く「山田錦」並に良好である(表2)。
7. 清酒仕込み試験では、酒母、もろみの溶けが良好である。吟醸酒の官能評価では、味が濃く、ふくらみがあり上品な酒質である(表3)。
8. 平成13酒造年度全国新酒鑑評会第I部(山田錦以外を原料とする)において、出品7点中5点が入賞し、うち2点は金賞を受賞している(表4)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 「秋田酒こまち」は秋田県内平坦部を中心に、250ha程度の普及が見込まれる。
2. 「美山錦」よりも耐倒伏性は強いが、酒米としての用途を考慮し、粗蛋白質含量の増加を防ぐ意味で、多肥栽培は避ける。
3. いもち病耐病性は葉いもち、穂いもちともに「美山錦」並なので、「美山錦」と同様に適期に防除を行う。
4. 白葉枯病に弱いので、常発地帯での栽培は避ける。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 酒造好適米新品種開発事業、主要農作物奨励品種決定調査
予算区分: 県単
研究期間: 1992〜2002年度
研究担当者: 松本眞一、眞崎聡、川本朋彦、小玉郁子、児玉徹、畠山俊彦、加藤武光
発表論文等: 品種登録申請(2001年3月)