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中苗あきたこまちの分げつ発生の特徴と中干し開始適期

[要約]
中苗あきたこまちは、1次分げつの2〜7号と、2次分げつの3〜5号が発生し、穂へ有効化するものは1次分げつの3〜6号が多く、それ以外は少ない。また、分げつ発生の特徴から、目標穂数と同数の茎数が確保できる主稈葉数8.1葉〜9.0葉の期間内に中干しを開始する。
[キーワード]
  あきたこまち、分げつ節位、分げつ次位、中干し
[担当]秋田農試・作物部・栽培生理担当
[連絡先]電話018-881-3336、電子メールk-kon@agri-ex.pref.akita.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
秋田県稲作指導指針では、中干しは目標穂数と同数の茎数を確保したら開始するとしているが、この時期は茎数が急増する時期であり、中干し開始の判断が難しい。また、7月に入ってから中干しを開始する農家が見られ、穂数過剰による籾数過剰や、有効茎歩合の低下から、品質・食味を落とす一因となっている。高品質・良食味米の安定生産のため、あきたこまちの分げつ発生の特徴を明らかにし、理論的な茎数増加の考察から、中干しの開始適期を示し、農家に適期中干しの実施を促す。
[成果の内容・特徴]
 
1. 分げつ発生の特徴(表1
1次分げつは2〜7号、2次分げつは3〜5号が発生するが、1次分げつの2号は発生数が少ない。穂へ有効化するものは、1次分げつの3〜6号が多く、1次分げつの7号や2次分げつは少なく無効茎となるものが多い。
2. 葉の伸展と分げつ発生の関係(表2
概ね片山の同伸葉理論に適合し、主稈の第N葉の伸展時期に、1次分げつはN−3号2次分げつはN−6号分げつが発生する。このため、無効茎となるものが多い1次分げつの7号や2次分げつは主稈葉数8.1〜9.0葉の期間以降に発生する。
3. 理論上の分げつ数の増加(表3
秋田県の標準的な耕種条件(栽植密度21.2株/m2、4個体/株植え、全層施肥)では、片山の同伸葉理論から、3号以降のすべての1次分げつが発生する場合、主稈葉数7.1〜8.0葉の期間までは、茎数は1葉増えるごとに85本/m2づつ増加する。主稈葉数8.1〜9.0葉の期間以降は2次分げつの発生が加わるため、2次分げつが各節位1本づつ発生する場合、茎数は1葉増えるごとに170本/m2づつ増加する。
4. 中干しの開始適期
秋田県稲作指導指針では、あきたこまちで目標収量570kg/10aを確保するための目標穂数は、県北で454、中央で440、県南で415本/m2である。表3より、主稈葉数8.1〜9.0葉の期間に茎数は509本/m2となり目標穂数を越えるので、この期間に中干しを開始する。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 中苗の移植栽培で、耕種条件が栽植密度21.2株/m2、4個体/株植え、全層施肥の場合に適用する。
2. 葉数、分げつの節位は、不完全葉の次に発生する葉を第1葉として数え、たとえば第3葉の基部から発生する分げつを3号分げつと呼ぶ。
3. 1次分げつの2号の発生が多い場合や、3号の発生が少ない場合は適用しない。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 気象変動に対応した良食味米の高品質生産技術の確立
予算区分: 県単
研究期間: 2000〜2002年度
研究担当者: 金 和裕、柴田 智、佐藤 馨、三浦 恒子、田口奈穂子、児玉 徹